(※写真はイメージです/PIXTA)

長年連れ添った夫婦でも、退職や子どもの独立をきっかけに、これからの暮らし方を考え直すことがあります。離婚後の一人暮らしには、家事や家計をすべて自分で担う大変さがある一方、誰かの生活時間に合わせず、自分のペースで暮らせるようになる人もいます。

「何を食べても文句を言われない」一人になって変わった毎日

65歳で再雇用を終えてから、正志さんの収入は年金月約20万円が中心になりました。

 

朝は7時ごろ起き、コーヒーを淹れてパンを食べます。昼は麺類や総菜で簡単に済ませ、夕食は自分で作ることが多いそうです。

 

「毎日、一人でご飯ですよ。でも、それを寂しいと思うことはあまりないんです」

 

結婚していたころは、食事の時間や献立について相手と合わせる場面がありました。

 

今は夕方にお腹が空けば5時半に食べ、まだ空いていなければ8時まで待ちます。スーパーで刺身が安ければ買い、食べたくなければ卵焼きと味噌汁だけの日もあります。

 

「何を食べても、何時に食べても、誰にも文句を言われないでしょう。最初はそれが意外と楽でした」

 

もちろん、一人暮らしになって困ったこともあります。

 

掃除や洗濯だけでなく、役所の手続きや家電が壊れたときの対応まで、すべて自分でしなければなりません。体調を崩したときには、「こういうときは一人なんだな」と感じたこともありました。

 

家計にも気を配り、大きな買い物をするときは預貯金とのバランスを確認しています。

 

一方で、以前より増えた支出もあります。

 

月に数回、近所の喫茶店で昼食をとり、そこで顔見知りになった同世代の男性と話すようになりました。最近は地域の図書館にもよく出かけます。

 

子どもたちとは月に何度か連絡を取り、年末には一緒に食事をします。元妻とも必要があれば連絡を取りますが、互いの生活には踏み込まない関係になりました。

 

「離婚したんだから、もっと寂しくなると思っていました。でも、一人になったことより、自分の時間を自分で決められるようになったことのほうが大きかったですね」

 

広い家も、毎日向かい合って食事をする相手も、今の正志さんにはありません。

 

それでも、朝起きる時間を決め、食べたいものを買い、好きな本を読んで一日を終える。誰かにとっては単調に見えるその暮らしを、正志さんは気に入っています。

 

「毎日一人でご飯。でも、離婚したことも、この団地に来たことも後悔はありません。今はちゃんと、自分の生活をしている感じがするんです」

 

一人で暮らすことと、孤独であることは同じではありません。正志さんにとっての幸せは、誰かと一緒にいることではなく、自分に合った生活の大きさとリズムを取り戻せたことにありました。

 

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