「もう欲しいものがない」
「一通り買いましたし、旅行も楽しみました。そうしたら、だんだん使う先がなくなってきたんです。お金を使わなきゃと無理に使っている感じで、むなしくなってきました」
そんな雨宮さんの意識を大きく変えたのが、ゴルフ仲間から紹介された74歳の松本さん(仮名)でした。松本さんもまた独身で近しい親族はおらず、潤沢な資産を持つ身。しかし、松本さんは「資産を自分で使い切る気はまったくない」というのです。
「僕も昔は、自分のために全部使おうと思ってた。でも、70代半ばにもなると、そんなに欲しいものもないんだよね。それで、自分で使わないなら、納得できるところに使ってもらったほうがいいなと。信頼できる寄付先やプロジェクトを調べて、少しずつお金を回しているところだよ。せめて、それが自分の生きた証になればと思ってね」
どうせ自分一人、死んだら終わりと思っていた雨宮さんは、その話に大きな感銘を受けたと言います。
「それまで『お金は自分のために使うもの』だと思っていたんです。でも、自分一人で使えるお金には限界がある。だったら、何のために使うのかを考えてみようと思いました」
それから雨宮さんは、何となく続けていた散財をやめ、寄付や社会貢献について調べ始めたといいます。
「介護費用は残して、あとは何かに役立てたいなと。もっと早く気づけばよかったと思います。でも、自分のために十分使ったからこそ、今こうやって考えられるのかもしれませんね」
