「3ヵ月くらい置いてほしい」娘と孫が戻ってきた日
「しばらく、実家に置いてもらえないかな」
恵子さん(仮名・70歳)が娘の聡美さん(仮名・43歳)からそう相談されたのは、昨年の秋でした。
恵子さんは夫の孝志さん(仮名・70歳)と2人暮らし。夫婦の年金収入は月約25万円、預貯金は約2,900万円あります。住宅ローンを完済した4LDKの一軒家で、退職後は旅行や趣味を楽しみながら暮らしていました。
聡美さんは夫との離婚を機に、中学生の息子を連れて家を出ることになりました。会社員として働いていましたが、今後の住まいや息子の学校について落ち着いて考えるため、「3ヵ月くらい」を目安に実家へ戻りたいという話でした。
恵子さんに断る理由はありませんでした。
「娘が帰ってきたのは嬉しかったんです。孫と一緒に暮らせるのも、最初は楽しみでした」
空いていた2部屋を娘と孫に使ってもらい、久しぶりに4人で囲む食卓もにぎやかになりました。
ところが1ヵ月、2ヵ月と過ぎるうちに、恵子さんの生活は少しずつ変わっていきます。
聡美さんは朝早く仕事へ向かうため、孫の朝食は恵子さんが用意。夕方には「今日、帰るの遅くなるから夕飯お願い」とメッセージが届くことも増えました。
洗濯物は2人分から4人分になり、食材の減りも早くなります。それでも恵子さんは、娘が仕事と子育てを一人で抱えているのだから仕方がないと考えていました。
問題は、当初の3ヵ月を過ぎても、同居を終える話が出なかったことです。
「部屋、どうするの?」
年明けに尋ねると、聡美さんは「いいところがなくて。もう少しここにいてもいい?」と答えました。
恵子さんは「もちろん」と返したものの、そのころには友人との一泊旅行を断ったり、夕食の時間に合わせて外出を切り上げたりする日が増えていました。
内閣府『令和6年度 高齢者の経済生活に関する調査』によると、60歳以上で子や孫の生活費を「ほとんど負担している」人は6.6%、「一部を負担している」人は18.6%で、合わせると25.2%です。70~74歳でも22.9%が何らかの形で子や孫の生活費を負担しています。
聡美さんも毎月5万円を家に入れていました。しかし、恵子さんが次第につらく感じるようになったのは、お金だけの問題ではありませんでした。
