「親切な女性」から「疑惑の対象」へ
「急にすみません。実は母の預金について調べているんです。生活費や病院代以上に減っている気がして違和感がありまして……。母が何か大きな買い物をしていたか、ご存じないですか?」
渡部さんの返答は“まさか”のものでした。
「慎ましく生活されていたと思います。ただ……何度か多少のお礼をいただいたことはあります」
「……え? それは初めて知りました」
渡部さんによれば、晶子さんから「これで何か買って」「いつもありがとう」 と、お金を渡されることがあったといいます。断っても「私が渡したいの」 というので受け取るようになったといいます。
「合計すると、いくらですか?」と聞いても、「お礼として都度いただいたもので、正確には覚えていません」との答え。
預金が減った800万円すべてが渡部さんに渡ったと考えているわけではありません。しかし、金銭の授受があったことと、数百万円程度の使途がわからないことが重なり、孝介さんは疑念にかられるようになりました。
「親切はお金が目的だったのではないか……」
「息子には頼れない」…母の本音
孝介さんは、念のため孝介さんは警察や弁護士に相談しましたが、「預金が減っていること」と「渡部さんが不当に財産を受け取ったことは別問題」と説明されました。
近所の人に母について聞いても、女性と仲良くしているのは知っていたけれど、細かいところまでは知らないとのこと。ただ、困っているような様子もなかったといいます。
結局、「母の預金が減っている」ことと、「渡部さんが母の財産を不当に受け取った」ことは別の問題です。その間を埋めるだけの材料は、ほとんど残っていなかったのです。
そんな中、渡部さんから言われたひと言が思い出されました。
「お母さまが寂しいとき、そばにいたのは私ですよ。病院に行くときも、買い物に行くときも、何かあれば私に連絡が来ました。『息子さんには頼れない』と。亡くなった後になってお金のことだけ探ってくるなんて、それこそお母さまが悲しむのではないですか?」
孝介さんには腹立たしい言葉でしたが、反論しきれない部分もありました。
渡部さんは本当に母を気にかけていたのか、それとも母を利用したのか。親切にするうちに自然と金銭のやり取りが生まれたのか。――その答えを見つけることは困難な状況です。
