友人の誘いより孫を優先してきた数年間
「来月、みんなでランチしない? 土曜日なら集まりやすいんだけど」
久しぶりに学生時代の友人から連絡をもらったとき、澄子さん(仮名・74歳)は予定表を見る前に、「土曜日は孫が来るから難しいかな」と返信しました。
澄子さんは夫の信夫さん(仮名・76歳)との二人暮らし。夫婦の年金は合わせて月約21万円、預貯金は約1,700万円あり、住宅ローンを完済した戸建てで暮らしています。
車で30分ほどの場所には、長男一家が住んでいます。小学6年生の孫娘と小学3年生の孫息子がいて、数年前から土曜日に遊びに来ることが増えていました。
始まりは、長男夫婦が共働きで忙しかった時期です。
「土曜日ならうちに連れてくればいいよ。二人とも家にいるから」
澄子さん夫婦から申し出ました。
午前中に孫たちが来ると、昼食を一緒に食べ、近くの公園やショッピングモールへ出かけます。夕方には長男夫婦が迎えに来る。そんな土曜日を、澄子さんも楽しみにしていました。
孫が来る前日の金曜日には、お菓子やジュースを買い、昼食の献立を考えます。誕生日が近ければ欲しいものを聞き、季節のイベントも一緒に楽しみました。
いつしか「土曜日=孫の日」という感覚が定着していきます。そのころから、友人に週末の食事や観劇へ誘われても、澄子さんは断ることが増えました。
「孫が来るから仕方ないと思っていたんです。友達とはまた会えるし、と」
実際には、毎週必ず来ると決まっていたわけではありません。それでも、「今週は来るかもしれない」と予定を入れずにいることが多くなりました。
夫の信夫さんは月に何度か友人と囲碁へ出かけていましたが、澄子さんは孫を迎えるため家に残ります。
内閣府『令和5年度 高齢者の住宅と生活環境に関する調査』によると、65歳以上で、日常生活のなかで家族や知人から「子や孫の世話」を頼られている人は26.0%でした。また、親しくしている友人・仲間が「たくさんいる」「普通にいる」「少しいる」と答えた人を合わせると8割を超えています。高齢期には、家族との関わりだけでなく、友人とのつながりを持ちながら生活する人も多くいます。
そんな生活が変わり始めたのは、孫娘が小学6年生になったころでした。
土曜日に習い事が入り、友人と出かける機会も増えます。下の孫もスポーツクラブへ通い始めました。
ある金曜日、澄子さんは長男に「明日は何時ごろ来る?」と連絡しました。返ってきたのは、「明日は二人とも予定があるから行かないよ」という短い返信でした。
