毎年10万円を包んできた祖父、16歳の誕生日に届いた連絡
「今年もこれで、好きなものを買ってあげて」
修一さん(仮名・72歳)は、長男の健太さん(仮名・45歳)にそう言って封筒を渡しました。中に入っていたのは10万円です。
修一さんは5年前に妻を亡くし、現在は一人暮らし。年金は月約14万円で、預貯金は約1,500万円あります。住宅ローンを完済した戸建てに住んでいるため、毎月の生活に困っているわけではありません。
健太さん一家は車で1時間ほどの場所に暮らしており、高校1年生の娘がいます。修一さんは初孫だったこともあり、孫娘を昔からかわいがってきました。
小学生のころには誕生日に欲しがっていたおもちゃを買い、中学生になると「何が欲しいのか分からないから」と現金を渡すようになりました。
最初は3万円でした。それが中学入学時には5万円になり、高校入学時には入学祝いとして20万円。その年の誕生日にも10万円を包みました。
お年玉は別に3万円渡しています。
「自分で使うより、孫に使ったほうがうれしかったんですよ。妻がいたら、きっと同じことをしたと思います」
健太さん夫婦も、そのたびに「ありがとう」と受け取っていました。
ところが16歳の誕生日祝いを渡した数日後、健太さんの妻からメッセージが届きました。
「いつも本当にありがとうございます。でも、来年からは気を遣わなくて大丈夫です」
修一さんは何度も画面を読み返しました。
「もういらないってことか?」
すぐに健太さんへ電話すると、「そういう意味じゃないよ」と言われました。
「父さん、誕生日だけじゃなくて入学祝いもお年玉もくれるだろ。最近ちょっと多すぎるんじゃないかって、前から二人で話してたんだよ」
修一さんには、思いがけない言葉でした。
内閣府『令和6年度 高齢者の経済生活に関する調査』によると、60歳以上で子や孫の生活費を「ほとんど負担している」人は6.6%、「一部を負担している」人は18.6%で、合わせて25.2%です。また、今後優先的にお金を使いたいものとして「子や孫のための支出(学費、こづかい等)」を挙げた人も25.8%でした。子や孫のためにお金を使うことを重視する高齢者は一定数います。
修一さんにとっても、孫へのお祝いは負担というより楽しみでした。そのため「気を遣わなくていい」という言葉が、素直には受け入れられなかったのです。
