(※画像はイメージです/PIXTA)

米国の金融政策や長期金利の動向を受け、金価格はいったん調整局面に入っています。しかし、金の下値を支える構造的な要因はむしろ強まっています。中央銀行による金購入は、第1四半期の減少から第2四半期には回復し、おう盛な需要トレンドが続いています。米国では財政赤字と政府債務の拡大が長期金利を押し上げる一因となっています。金は「利息を生まない資産」から、国家の信用リスクや財政リスクから距離を置くための資産として、改めて評価されつつあります。今後、調整を経て4,500~5,000ドルへの上昇を再開する可能性はあるのでしょうか。※なお、本稿はステート・ストリート・インベストメント・マネジメントの4名のストラテジストによる共同執筆です。

中央銀行:第2四半期の購入量回復により、おう盛な需要トレンドの継続を確認

中央銀行の金需要は第2四半期に回復し、金の純購入量は前年同期比62%増の289トンと、第2四半期として過去最高を記録しました※10

 

第1四半期の純購入量が244トンから57トンに下方修正されたことを受け、2026年上半期の公的部門による純購入量は足元で345トンとなり、これは購入量がわずか241トンにとどまった2022年以来、上半期としては最低の水準です※11

 

金価格の下落、不透明な地政学的環境、および準備資産の継続的な分散化が第2四半期の急速な購入ペースを支えたとみられ、取引の大半は新興国の中央銀行によるものでした。

 

報告された第2四半期の金購入は幅広い国・地域に及んでいました。ポーランド国立銀行が51トンの購入でトップとなり、上半期の購入量は計82トン、金保有量は632トンに達し、目標水準の700トンに近づきました※12。中国人民銀行は、四半期としては2023年第4四半期以降で最大となる33トンを追加購入した結果、上半期の購入量は40トン、報告された保有量は2,346トンに達しました※13

 

購入を報告した他の中央銀行は、ウズベキスタン(+16トン)、カザフスタン(+15トン)、ヨルダン(+6トン)、チェコ共和国(+6トン)などです※14。第1四半期の純購入量を押し下げた大規模な売却は、第2四半期には大幅に減少しました。第1四半期の最大の売り手だったトルコ中央銀行による金地金の売却も小規模にとどまりました※15。第2四半期の最大の売り手はロシア中央銀行で、保有量を22トン減らしました※16

 

2026年上半期の公的部門による購入量は近年に比べて減少していますが、上半期の購入量が減少したからといって年間購入量も減少するとは限りません。2022年上半期の公的部門による純購入量は241トンとさらに低調でしたが、下半期の純購入量は大幅に加速し、通期では1,080トンに達しました※17

 

2026年下半期に同程度の回復が見込まれるわけではありませんが、2026年の基本シナリオ予測を約700トンに上方修正しました※18。これは2022~2024年の記録的なペースからは減速するものの、2026年は依然として公的部門の金需要がおう盛な年として歴史に刻まれることでしょう。

 

総じて、中央銀行の需要が金価格を構造的に下支えすると引き続き予測されます。最新の外貨準備運用担当者向け調査も、公的ポートフォリオにおける金の戦略的な役割を改めて裏付けています※19

 

[図表2]1つの財政の道筋を映す2つの価格指標:米国の連邦債務と金価格(1900~2056年)★2
次ページ米国の財政リスクが高まるなか、金の再評価は続く

〈ご留意事項〉
本書は、投資の推奨や投資アドバイスを意図したものではなく、そのようなものとして依拠されるべきではありません。

本稿に示されている見解は2026年7月31日時点のSPDRゴールド戦略チームの見解であり、市場やその他の状況によって変わる場合があります。本資料には、将来の見通しと見なされる可能性のある記述が一部含まれています。その様な記述は、将来のパフォーマンスを保証するものではなく、実際の結果や展開はこれら予想とは大きく異なる場合がある点にご注意ください。

提供された情報は、投資助言に該当するものではなく、そのようなものとして依拠されるべきではありません。本情報は、有価証券の購入の勧誘または売却の申出とみなされるべきものではありません。本情報は、投資家の特定の投資目的、戦略、税務上の地位または投資期間を考慮したものではありません。ご自身の税務・財務アドバイザーにご相談ください。

ここで言及されている商標およびサービスマークは、それぞれの所有者の所有物です。第三者のデータ提供者は、データの正確性、完全性または適時性に関していかなる保証または表明も行わず、また、かかるデータの使用に関連するいかなる種類の損害に対しても責任を負いません。

当社の書面による明示的な同意なしに、本著作物の全部または一部を複製、複写もしくは送信し、または第三者に開示することはできません。

コモディティやコモディティ指数に 連動した証券は、全体的な市場動 向の変化や金利の変化、さらには天 候、疾病、通商停止や政治的ないし 規制的な展開、対象コモディティに 係る投機者や裁定者の取引活動な ど、他の要因の影響を受けます。

コモディティへの投資は大きなリスクを伴うため、すべての投資家に適した投資対象ではありません。

過去の実績は、将来の投資成果を保証するものではありません。

本資料は、ステート・ストリート・インベストメント・マネジメントが作成したものをステート・ストリート・グローバル・アドバイザーズ株式会社が和訳したものです。内容については原文が優先されることをご了承下さい。

ステート・ストリート・グローバル・アドバイザーズ株式会社
金融商品取引業者 関東財務局長(金商)第345号
加入協会:一般社団法人 資産運用業協会、日本証券業協会

© 2026 State Street Corporation.
7620090.17.1.APAC.RTL Exp date:8/31/2027

〈注記〉
※1 Source: Bloomberg Financial L.P., State Street Investment Management, as of 07/31/2026
※2 Source: Bloomberg Financial L.P., State Street Investment Management, as of 07/31/2026
※3 Source: Bloomberg Financial L.P., State Street Investment Management, as of 07/31/2026
※4 Source: Bloomberg Financial L.P., State Street Investment Management, as of 07/31/2026
※5 Source: Bloomberg Financial L.P., State Street Investment Management, as of 07/31/2026
※6 Source: Bloomberg Financial L.P., State Street Investment Management, as of 07/31/2026
※7 Source: Bloomberg Financial L.P., State Street Investment Management, as of 07/31/2026
※8 Source: Bloomberg Financial L.P., State Street Investment Management, as of 07/31/2026
※9 Source: Bloomberg Financial L.P., State Street Investment Management, as of 07/31/2026
※10 Source: World Gold Council Gold Demand Trends Q2 2026, as of 07/30/2026
※11 Source: World Gold Council Gold Demand Trends Q2 2026, as of 07/30/2026
※12 Source: World Gold Council Gold Demand Trends Q2 2026, as of 07/30/2026
※13 Source: World Gold Council Gold Demand Trends Q2 2026, as of 07/30/2026
※14 Source: World Gold Council Gold Demand Trends Q2 2026, as of 07/30/2026
※15 Source: World Gold Council Gold Demand Trends Q2 2026, as of 07/30/2026
※16 Source: World Gold Council Gold Demand Trends Q2 2026, as of 07/30/2026
※17 Source: World Gold Council Gold Demand Trends Q2 2026, as of 07/30/2026
※18 Source: World Gold Council, State Street Investment Management, as of 07/31/2026
※19 Source: World Gold Council Gold Demand Trends Q2 2026, as of 07/30/2026
※20 Source: Bloomberg Finance L.P., Federal Reserve & State Street Investment Management, as of 07/31/2026
※21 Source: Congressional Budget Office & State Street Investment Management, as of 07/31/2026
※22 Source: Congressional Budget Office & State Street Investment Management, as of 07/31/2026
※23 Source: Congressional Budget Office, "The Long-Term Budget Outlook Data: 2026 to 2056" (Pub. No. 62044, February 25, 2026), Bloomberg Finance L.P., & State Street Investment Management, as of 07/31/2026
※24 Source: Bloomberg Finance L.P. & State Street Investment Management, as of 07/31/2026
※25 Source: Bloomberg Finance L.P. & State Street Investment Management, as of 07/31/2026
※26 Source: Bloomberg Finance L.P. & State Street Investment Management, as of 07/31/2026

<出所>
★1 出所:ワールドゴールドカウンシル、ステート・ストリート・インベストメント・マネジメント、2026年7月31日時点。記載されているパフォーマンスデータは過去のパフォーマンスです。過去のパフォーマンスは将来の結果を保証するものではありません。
★2 出所:米議会予算局(CBO)、ブルームバーグ・ファイナンス,L.P.、ステート・ストリート・インベストメント・マネジメント、2026年7月31日時点。実績値は1900~2025年の実績: CBOの過去の予算データ。予測値は2025~2056年の予測: 米会計検査院(GAO)が2026年6月に発表した報告書「GAO-26-108610: 米国の財政健全性」に示されたCBOとGAOによる長期シミュレーションによると、対GDP債務比率は2025年の約99%から2056年には約250%まで上昇します。 記載されているパフォーマンスデータは過去のパフォーマンスです。過去のパフォーマンスは将来の結果を保証するものではありません。

<用語集>
・ブレトン・ウッズ体制:第二次世界大戦後の国際通貨体制(1944年~1971年)で、米ドルを1オンスあたり35ドルで金に、その他の通貨を米ドルに固定したものです。米国がドルの金兌換を停止した1971年に終了し、その後、金価格は自由変動制となりました。

・中央銀行:一つの国または国家連合で用いられる通貨と信用の創造と分配を独立性を持って管理する金融機関

・民間等保有債務:米議会予算局(CBO)が使用する連邦債務の指標であり、連邦政府以外の投資家が保有するすべての米国債を反映したものです。多くの場合、国内総生産(GDP)に対する比率として表されます。

・米連邦公開市場委員会(FOMC):米連邦準備制度理事会(FRB)の金融政策決定機関であり、定期的に会合を開き、フェデラル・ファンド(FF)金利の目標レンジ、および米国の金利や金融情勢に影響を与えるその他の金融政策手段を決定します。

・金のスポット価格:スポット市場における金の価格。国際的通貨コード「XAU」で表記される、1トロイオンス当たりの金価格。米ドル建て。

・国内総生産(GDP):一定期間内に国内で生み出されたすべての完成品およびサービスの総金額を指します。経済生産高の最も広範な指標として、また債務対GDPの比較における分母として一般的に用いられます。

・タカ派的:通常、インフレ抑制を目的とする政策金利の引き上げや金融緩和の縮小など、金融引き締めを指向する中央銀行の姿勢やメッセージを表します。

・インプライド・ボラティリティ・スキュー:満期が同じで権利行使価格が異なるオプション間で生じるインプライド・ボラティリティの差異を指します。プット・バイアス・スキューは、オプション市場が下落リスクへのヘッジ需要をより大きく織り込んでいることを示します。

・純購入量:一定期間に中央銀行または中央銀行グループが購入した金の総量から売却量を差し引いたもので、通常はトン単位で測定されます。

・公的部門:金の購入や外貨準備運用という文脈において、中央銀行やその他の政府系・国際通貨機関を指す用語であり、民間部門の市場参加者と区別されます。

・中国人民銀行:中国の中央銀行で、金融政策、通貨管理、および金融システムの監督を担当しています。

・実質金利:インフレ調整後の金利。物価上昇の影響を取り除くことで、真の借入れコストおよび投資による実際の利回りを反映します。

・準備資産の分散:集中リスクや特定の準備通貨への依存度を低減するため、中央銀行が外貨準備を金などの複数の資産クラスや通貨に分散させる取り組みです。

・タームプレミアム:投資家が一連の短期債券ではなく、長期債券を保有する際に要求する追加利回りのことで、時間の経過に伴って増大する金利リスクやインフレ・リスクを補償するものです。

・トン:メートルトン(1,000キログラム)のことで、ワールド・ゴールド・カウンシル(WGC)などが発行する業界レポートにおいて、中央銀行による純購入量など、金の需給量を測定するために使用される標準単位です。

・米国の金ETF:通常、現物の金を保有することにより、金価格に連動するように設計された米国の上場投資信託(ETF)です。投資家が金を直接保有することなく、金価格の変動に対するエクスポージャーを投資家に提供します。

・ボラティリティ・オブ・ボラティリティ:資産のインプライド・ボラティリティ自体が時間の経過とともにどれだけ変動するかを表す指標であり、オプション市場における織り込みやヘッジ需要の安定性に関する情報を提供します。

・イールドカーブのスティープ化:短期債と長期債の利回り格差が拡大する現象です。「ブル・スティープ化」は、短期債利回りが長期債利回りよりも急速に低下する際に発生し、多くの場合、中央銀行の政策に対する期待の変化を反映しています。

人気記事ランキング

  • デイリー
  • 週間
  • 月間

メルマガ会員登録者の
ご案内

メルマガ会員限定記事をお読みいただける他、新着記事の一覧をメールで配信。カメハメハ倶楽部主催の各種セミナー案内等、知的武装をし、行動するための情報を厳選してお届けします。

メルマガ登録
会員向けセミナーの一覧