老後の家計から抜け落ちやすい「援助」という出費
老後資金で見落とされやすいのが、子どもや孫への援助。一度の金額がそれほど大きくなければ、「これくらいなら」と考えがちです。
また、こうした支出は毎月決まった日に発生するものではないため、その都度ATMから引き出したり、別の口座から支払ったり、自分の財布から手渡したり――。年間でいくら使ったのかを把握しづらくなることもあります。
実際、達夫さん夫妻の資産が減った理由は、一つではありませんでした。外壁塗装や給湯器、車の買い替えなど、まとまった支出もあります。旅行や外食、レジャーにもお金を使いました。65歳以降は、年金だけでは足りない生活費を貯金から補填することも増えました。
そして、子どもや孫への援助。入学祝い、誕生日、小遣い、家族旅行の費用。子どもが困っていると聞けば、数万円、10万円と渡すこともありました。ただし、9年間でいくら使ったのかは、達夫さん夫婦自身にも分かりません。
9年間で約1,400万円を失ったという事実はあっても、その使い道を完全に説明することはできなかったのです。
総務省の「家計調査」によると、2025年の65歳以上の夫婦のみの無職世帯では、実収入が月25万4,395円なのに対し、消費支出は26万3,979円。税や社会保険料などを含めると、家計はさらに厳しくなります。
平均的な高齢夫婦世帯でも、年金などの収入だけですべての支出を賄うのは容易ではありません。だからこそ、生活費以外の「見えにくい出費」を放置すれば、資産の減少スピードはさらに速くなりかねないのです。
「これまでのような援助はできない」
夫婦は衝撃の残高発覚の後、子どもたちに家計の状況を説明し、金銭的な援助は控えています。
「1年に100万円の取り崩しでも、16年しか持たない計算です。長生きしたらやっていけるのか……すっかり不安になってしまいました」
家でのんびりする時間も惜しくなり、今は夫婦でアルバイトに出ているといいます。
老後に1,600万円=必ず生活が破綻するという話ではありません。重要なのは、資産がいくら残っているかだけでなく、どのくらいのペースで減っているかです。
夫婦それぞれの口座、定期預金、証券口座などを含めて、年に一度は資産を合算する。そして、生活費だけでなく、子どもや孫への援助、旅行や外食なども含め、1年間でどれだけ資産が減ったのかを確認する。
「まだこれだけある」ではなく、「このペースで使い続けたら、あと何年もつのか」。老後資金を守るためには、残高そのものだけでなく、お金の減り方に目を向けることが大切なのです。
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