「この家を持ち続ける必要があるのか」70歳で考えた住み替え
「また給湯器か……」
修一さん(仮名・70歳)が業者から交換を勧められたのは、妻を亡くして5年ほど経ったころでした。
修一さんは一人暮らし。年金は月約17万円、預貯金は約1,400万円あります。30年前に購入した4LDKの戸建ては住宅ローンを完済していました。
子ども2人はすでに独立し、普段使っているのは1階のリビングと台所、寝室くらいです。2階の子ども部屋には家具や荷物が残っていますが、日常的に使うことはありません。
それでも家を持っている限り、手入れは必要でした。庭木の剪定や草取りは数年前から業者に頼むようになり、前年にはエアコンを交換。今後は外壁や屋根の補修も必要だと言われています。
「一つ直したら、次は別のところが気になるんです。年金で毎月暮らせていても、まとまった修繕費は貯金から出すことになるでしょう」
階段の上り下りも以前ほど楽ではありません。修一さんは次第に、「一人で暮らすのに、この広さは本当に必要なのか」と考えるようになりました。
最初に調べたのは民間の賃貸住宅です。しかし、スーパーや病院に近い1LDKや2DKでは、家賃と管理費を合わせて月6万~7万円ほどになる物件もありました。
年金17万円から長期間払い続けることを考えると、決断できません。
そこで目に留まったのが、市の広報に掲載されていた市営住宅の募集でした。
公営住宅は、公営住宅法に基づき、住宅に困窮する低額所得者へ低廉な家賃で住宅を供給する制度です。入居には収入などの要件があり、高齢者など一定の要件を満たす人については単身入居が可能です。具体的な条件は自治体によって異なります。
修一さんも市役所で相談し、自分が申し込めることを確認しました。ただし、希望すればすぐ入れるわけではありません。
募集されるのは空室がある住宅で、応募者が多ければ抽選になる場合があります。実際、都営住宅には抽選方式の定期募集があり、自治体によって募集時期や方法はさまざまです。
最初に申し込んだのは、駅にもスーパーにも近い団地でした。
結果は落選。
「正直、団地ならもっと簡単に入れると思っていました」
修一さんは戸建てを売らず、そのまま次の募集を待ちました。入居先が決まる前に家を売ってしまえば、抽選に外れたときに住む場所に困るからです。
数ヵ月後、別の団地で募集がありました。今度は駅からの近さだけにこだわらず、スーパーと内科へ歩いて行けること、エレベーターがあることを優先して申し込みました。
2度目の応募で当選。その後、収入などの入居資格を確認する手続きを経て、ようやく入居が決まりました。
