宝くじは「非課税」なのに、馬券は「課税」…競馬で“億単位の利益”を得た会社員に、最高裁が下した〈有罪判決〉

宝くじは「非課税」なのに、馬券は「課税」…競馬で“億単位の利益”を得た会社員に、最高裁が下した〈有罪判決〉
(※写真はイメージです/PIXTA)

「所得税」は、消費税などと並んで我々にとってもっとも身近な税金といえます。給与には必ず所得税がかかり毎月自動で天引きされますが、宝くじや競馬など、給与以外で得た一時的な所得についてはどうなるのでしょうか。『[新版]分かりやすい「所得税法」の授業』(光文社)より、税法が専門の青山学院大学教授の木山泰嗣氏が、宝くじの当選金に認められている“特例”と、馬券で億単位の利益を出した会社員に最高裁が下した判決について解説します。

馬券の利益は課税対象…「みんなやってない」は通用しない所得税法の原則

競馬事件(※)が報道されたときに、「宝くじは課税されないのに、馬券は課税されるのはおかしい」という街の声もありました。馬券が課税されるのは、それを非課税と認める法律がないからです。

※インターネットを使って競馬で億単位の利益をあげていた会社員が、その利益を申告していなかったため、検察官から起訴された刑事裁判

 

そもそも、日本の所得税法では、あらたな経済的価値の流入がある限り、すなわち財布にお金が入ってくる限り、原則として「所得」にあたり、所得税が課される仕組みになっているのです。

 

ですから、競馬の馬券で利益を得た人は、その所得について、法定申告期限である翌年の3月15日までに「確定申告書」を所轄税務署に提出しなければならないのです。ただし、給与所得の金額が2000万円以下の給与所得者は、年間のほかの所得(給与所得および退職所得以外の所得)の金額が20万円以下であれば、確定申告書を提出することは不要です(所得税法121条1項1号)。

 

「みんなそんなことやってないじゃないか」と思われるかもしれません。でもそれは、本当は所得税法に違反していることなのです。いわゆる「申告漏れ」にあたり、意図的にやるなど「偽りその他不正の行為」があるとなれば、脱税として刑事事件の対象にもなります。

競馬で億単位の利益を得た会社員…最高裁が下した〈有罪判決〉

競馬事件の会社員の方も、第一審で、その所得は「(検察官が主張するような)一時所得ではなく、雑所得である」と認定され、ほぼ全面的に主張が認められたにもかかわらず、「懲役2月(げつ)。執行猶予2年」の刑が宣告されました(最高裁平成27年3月10日第三小法廷判決・刑集69巻2号434頁)。

 

確定判決で有罪になったのは、申告すべき所得を申告していなかったという「無申告」の事実が、裁判所に認められたからです。これは「単純無申告犯」という罪で、「正当な理由」がなく確定申告書を提出期限までに提出しなかった者は、1年以下の拘禁刑(当時は懲役)または50万円以下の罰金に処するというものでした(所得税法241条)。

 

ただし「単純無申告犯」が適用される例はあまり多くありません。競馬事件でそこまでする必要があったのか? 結果からみれば疑問も生じます。

 

とはいえ、これまでなかったインターネットと自動購入ソフトを利用して、億単位の利益を得る事例の出現に、当局はこれを放置できなかったものと思われます。無申告がまかり通ってはならない、という発想でしょう。

 

 

木山 泰嗣

青山学院大学法学部教授(税法)/同大学大学院法学研究科ビジネス法務専攻主任

鳥飼総合法律事務所客員弁護士

 

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※本連載は、木山 泰嗣氏の著書『[新版]分かりやすい「所得税法」の授業』(光文社)より一部を抜粋・再編集したものです。

[新版]分かりやすい「所得税法」の授業

[新版]分かりやすい「所得税法」の授業

木山 泰嗣

光文社

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