●7月30日以降、日米協調介入などで円は対ドルで急騰も、上昇幅は8月10日で半分以上戻す。
●介入で相場のトレンド転換は困難、164円超の円安抑制ができたなら介入効果ありと考えられる。
●介入を繰り返さずとも、政府の財政規律配慮と日銀利上げへの理解で、一定の円安抑制効果も。
7月30日以降、日米協調介入などで円は対ドルで急騰も、上昇幅は8月10日で半分以上戻す
ドル円は7月23日に、一時1ドル=163円99銭水準をつけ、しばらく164円台乗せをうかがう展開が続きました。その後、7月30日にドル安・円高が急速に進行したことを受け、市場では政府・日銀による為替介入の観測が浮上、翌31日に日米協調為替介入が実施されたことで、ドル安・円高が一段と進み、ドル円は8月3日に155円23銭水準をつけました(図表1)。
しかしながら、ホルムズ海峡の航行を巡る不透明感がくすぶるなか、8月5日以降、WTI原油先物価格が上昇に転じると、ドル円は次第にドル買い・円売りが優勢となり、ドル円は8月10日に159円39銭水準をつけ、159円台を回復しました。7月30日に円が急騰する直前、ドル円は162円80銭付近で推移していましたので、8月3日の155円23銭水準と10日の159円39銭水準を踏まえると、すでに円の上昇は半分以上戻ったことになります。
介入で相場のトレンド転換は困難、164円超の円安抑制ができたなら介入効果ありと考えられる
7月30日から8月10日までのわずか7営業日で、円の上昇が半分以上戻ったことから、市場では為替介入の効果を疑問視する声も聞かれます。ただ、為替介入の目的は、為替相場の急激な変動を抑え、その安定化を図ることにあります。この点を踏まえると、財務省は今回、為替介入を行わなければ164円を超えて大幅に円安が進む恐れがあると考え、為替相場の安定が必要と判断し、為替介入に踏み切ったと推測されます。
一般に、為替介入の効果については、為替レートの過度な変動を一時的に抑制できても、相場のトレンド自体を変えることは極めて困難と解釈されています。そのため、7営業日で円の上昇が半分以上戻ったとしても、ドル安・円高へのトレンド転換が難しい以上、それは当然の動きであり、むしろ、164円を超えるような円安方向の急激な変動を抑制できたという点で、為替介入の効果はあったと考えられます。
介入を繰り返さずとも、政府の財政規律配慮と日銀利上げへの理解で、一定の円安抑制効果も
足元で、ドル高・円安が進みやすい背景には、①米利上げ観測、②中東情勢の悪化と原油高、③日銀の利上げが後手に回る「ビハインド・ザ・カーブ」に対する懸念、④日本の財政悪化懸念、⑤日本の国際収支構造などがあると思われます(図表2)。いずれも為替介入では解決できず、例えば①と②は、米利上げ観測の後退、米国とイランの協議進展、原油価格の低下という動きが確認されれば、ドル安・円高の材料になり得ますが、状況次第といえます。
また、⑤について、収支構造を変化させるには、かなりの時間を要します。そのため、すぐに能動的に対応できるのは③と④ということになります。政府が財政規律に配慮して、日銀による適切なタイミングでの利上げに理解を示し、③と④の懸念を払しょくできるようなメッセージを市場に発信できれば、為替介入を繰り返し実施しなくても、一定の円安抑制効果は期待できると思われます。
※当レポートの閲覧にあたっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『159円台に戻ったドル円~改めて考える為替介入の効果【三井住友DSアセットマネジメント・チーフマーケットストラテジスト】』を参照)。
市川 雅浩
三井住友DSアセットマネジメント株式会社
チーフマーケットストラテジスト
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