基本的にはリフォーム業者に費用請求できるが・・・
Q
リフォーム工事をしたところ、建築基準法に違反していたことが判明し、直さないといけなくなりました。かかった費用を業者に請求したいと思いますが、認められますか。また、リフォーム工事が管理規約違反ということで管理組合から原状回復を求められた場合の原状回復費用はどうでしょうか。
A
建築基準法に違反した工事には瑕疵があると考えられますので、直すのにかかった費用をリフォーム業者に請求することは基本的には可能であると思われます。他方、管理規約違反の場合には、規約の内容を業者が知っていたり、当然知りうる状況にある中で工事をしたような場合には瑕疵があるとして、原状回復に要した費用を請求することができると考えられます。もっとも、いずれの場合も、施主の指示内容が不適当であるような場合には、請求が制限される可能性もあります。
(1)建築基準法違反の場合
本章Q5などで解説したとおり、リフォームのような請負契約においては、完成した物に瑕疵がある場合には、瑕疵の修補や損害賠償を請求することができます(民法634条)。
「瑕疵」とは、完成された仕事が契約で定めた内容どおりでなく、使用価値または交換価値を減少させる欠点があるか、または、当事者があらかじめ定めた性質を欠くなど不完全な点を有することとされています。
施主は建築基準法に準拠した工事を発注しようと考えるのが通常ですし、仮にもリフォーム業者であれば、建築基準法について必要な知識をもっているべきであり、それに準拠した工事をすることが通常求められているといえますので、工事の結果、建築基準法に違反してしまった場合には、その工事には瑕疵があると考えることになると考えられます。したがって、施主としては、建築基準法違反を是正するために要した費用については、これを損害として、リフォーム業者に請求することができると考えられます。
なお、瑕疵が施主の指示によるものの場合には、リフォーム業者は瑕疵担保責任を負わず、業者が指示が不適当であることを知りながらそれを告げなかった場合に瑕疵担保責任を負うとされています(民法636条)。リフォーム業者から施主が発注した工事を進めると建築基準法違反になることを知らされながら、あえて工事を進めるように指示した場合には、請求ができないこともあると考えられます。
「公の規範」ではない管理規約や細則違反の場合は?
(2)管理規約違反の場合
建築基準法と異なり、管理規約は個々のマンションによって異なるものと考えられるため、リフォーム業者としては管理規約の内容を知らずに工事を受注することもあると考えられます。
そのため、リフォームの工事の内容が規約に違反するものとして管理組合から原状回復を求められた場合であっても、当然にはかかる工事は瑕疵ということにはならないと考えられます。
もっとも、管理規約の内容をリフォーム業者が認識していたような場合や、認識すべきであったといえる場合は、規約に準じた工事をすることも請負契約の内容に含まれていたと考えることもできると思います。このような場合には、規約違反の工事を是正することに要した費用について、瑕疵担保責任として、請求する余地もあると考えられます。なお、この場合であっても、施主からの指示が不適当なものであったために規約違反の工事となった場合には、リフォーム業者が注文内容が不適当であることを知っていてこれを告げなかったような場合を除き、業者に対して瑕疵担保責任を問うことはできないのは、前記1と同様です(民法636条)。
建築基準法の場合と異なり、管理規約や細則は公の規範ではないため、リフォーム業者が当然に認識すべきであったとまでいえるかどうかはむずかしいところです。やはり、工事を依頼する段階で、管理規約や細則を業者に示して、それに基づき違反工事とならないよう、しっかりと打合せをしてから工事を始めることが肝心です。