今回は、マンションの区分所有者がベランダを勝手にリフォームした場合の、管理組合としての対応方法を見ていきます。※本連載は、マンション維持管理支援・専門家ネットワークの編著書『Q&Aマンションリフォームのツボ―管理組合・居住者が知っておくべきトラブル予防・解決の必須知識』(民事法研究会)の中から一部を抜粋し、リフォームにまつわるトラブルを防止し、マンション全体の資産価値の向上にもつながるリフォームの基礎知識を具体例とともに紹介します。

マンションのベランダは共用部分

ある部屋の区分所有者が、リフォームをした際に、専用使用権を認めているベランダに砂利を敷き詰め、日本庭園風にしていることがわかりました。管理組合としては、元に戻してもらいたいと思っているのですが、可能でしょうか。その場合、どのような方法をとればよいのでしょうか。

 

元に戻すよう請求することは可能です。その場合、任意で元に戻すよう請求し、これに応じない場合には、裁判を提起することができます。

 

ベランダは共用部分にあたりますので、専用使用権が認められていても、その「用方」に従って使用をすることだけが認められます(区分所有法13条)。専用使用権の認められた共用部分を無断で改築等することはできません。


このような事態が生じた場合、管理組合理事会は、区分所有法57条に基づき、変更したものを元に戻すよう請求することができます。また、管理規約に基づいて原状回復を求めることもできます。


区分所有者が任意に理事会からの請求に従わない場合には、理事長は、集会の決議を経たうえで、原状回復を求めるための訴訟を提起することもできます。もっとも、原状回復を求めるためには、規約に違反している、あるいは、共同の利益に反する行為であることが必要であると考えられていますので、多少、他の区分所有者の利用方法と異なっているからといって、当然にその撤去等が認められるとは限りません。

共同の利益に反するような場合は訴訟も提起できるが…

本件のような事案においても、管理規約にベランダの使用方法が規定されている場合や、そのような規定がなくても、砂利がおかれることにより他の区分所有者が避難等するために支障があるなど共同の利益に反するといえるような場合には、上記の方法によって元に戻すよう請求ができると考えられます。

 

なお、砂利を敷き詰めたのが、専有部分である部屋の中という場合には、当然には元に戻すよう請求することはできないと考えられます。この点、東京地裁平成24年7月25日判決は、専有部分である部屋の床に砂利や石などを敷きつめ、日本庭園風にしたことが管理規約等に違反するなどとしてその撤去等を求めた事案において、このような行為によってマンションの体に悪影響が生じ、その存在自体によりマンションの居住者に迷惑が生じているという具体的な状況が認められないなどとして、この請求を認めませんでした。

本連載は、2015年12月1日刊行の書籍『Q&Aマンションリフォームのツボ―管理組合・居住者が知っておくべきトラブル予防・解決の必須知識』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない場合もございますので、あらかじめご了承ください。

Q&Aマンションリフォームのツボ―管理組合・居住者が知っておくべきトラブル予防・解決の必須知識

Q&Aマンションリフォームのツボ―管理組合・居住者が知っておくべきトラブル予防・解決の必須知識

民事法研究会

マンションを終の棲家と考え、買替えではなく、同じ場所に長く住み続けたいという需要の増加で、マンションリフォームの需要が高まりをみせてます。他方、リフォームに関する法規制は不十分で、専門知識や技術のない業者が多く…

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