破産手続が開始された後は破産管財人と対応を協議
Q
マンションのリフォームを依頼している業者が工事途中で破産するという噂を聞きました。どうしたらよいのでしょうか。
A
まず、事実の確認が先決です。リフォーム業者が倒産の危機に瀕しているのであれば、業者に連絡がつかなかったり、工事自体がストップしていることが多いので、工事現場に行って工事の現況を確認したり、下請業者から情報を入手するなどしましょう。自己破産の申立てであれば、リフォーム業者の代理人弁護士から、まず破産申立ての予告通知が届くのが通常です。破産手続が開始された後は、破産管財人と対応を協議することとなります。
(1)破産の手続
リフォーム業者の破産手続では、裁判所が破産管財人を選任します。管財人は、未回収の売掛金を回収したり、残余財産を換価して原資をつくったりして、最終的に、その業者の全債権者に対して債権額の割合に応じて配当します。
このように、裁判所により破産手続開始の決定が出された後は、破産したリフォーム業者に属するすべての財産(債権や債務を含みます)の管理・処分は管財人の権限になります。その時点以降は、管財人との交渉になります。
(2)途中の工事はどうなるか
リフォーム工事が途中の場合、以降の工事をどうするか(工事を継続して完成させるのか、解除するのか)は、管財人が判断することになります。
管財人が工事継続を選択した場合、契約の相手方がリフォーム業者だったのが管財人になるというだけです。工事が当初の予定どおり終了したら、契約で決められた請負代金を管財人に支払います。
ただし、リフォーム業者が破産するというケースでは、そもそも必要な職人も業者を辞めてしまっているというケースが大半ですから、そもそも管財人として工事継続の選択をするということ自体が困難な状態であるのが通例でしょう。
そうすると、管財人が契約を解除することになります。この場合は、工事の残りの部分は、施主が他のリフォーム業者を探して残りの部分の工事を依頼することになります。
なお、破産管財人が、工事続行か契約解除かの判断をしないときは、施主が解除するかどうかの判断を催告することができ、破産管財人の確答がなければ、解除したとみなされます(破産法53条2項)。
重要な問題となる「既払金」の取扱い
(3)既払金の扱い
管財人が契約解除を選択した場合に生じるのが、既払金の取扱いの問題です。
仮に、施主が支払済みの既払金が、そこまでの出来高部分相当額よりも小さい場合(既払い分以上に工事が進んでいる場合)、管財人が施主に対して差額(未払い分)を請求します。ここで、施主側としては、残工事のために要することとなる超過費用(大抵の場合、他社が途中まで手掛けた工事を引き継ぐときには、請負代金は高額になる傾向があります)、あるいは、工期が余計にかかってしまうことによって発生する諸費用を損害として賠償請求権を主張し、管財人からの差額請求と相殺することが考えられますが、裁判例上、それは認められていません(東京地裁平成24年3月23日判決、札幌地裁平成25年3月27日判決)。施主としては困ってしまうところですが、これについては、管財人との間で出来高算定の段階で出来高部分を低めに出してもらうなどして、施主が管財人に支払うべき差額を圧縮するよう交渉することになるでしょう。
逆に、途中工事の出来高部分相当額以上に既払金として払ってしまっているとしたら、施主は、管財人から超過部分相当額について清算・返還を受けることになります。
このケースで問題となるのが、解除したのが管財人側なのか施主側なのかによって、法的位置づけが異なってくる点です。
管財人が解除したとすると、施主に認められる上記債権は財団債権となります(破産法54条2項)。破産の場合、管財人が破産者の権利義務関係を清算して、残余財産を原資に債権者に配当するという手続になるのですが、その配当場面において、他の債権者に優先して支払いを受けられる債権が財団債権です。
これに対して、施主側が解除したとすると、上記債権は破産債権として取り扱われます。破産債権というのは、他の債権者と平等の取扱いしかされません。
このように、同じ請負契約解除なのにもかかわらず、債権の扱いが全く異なるわけですから、施主側としては、管財人に対して、管財人側から契約を解除するよう申し入れることが大切です。専門的知識が必要な分野ですので、専門家(弁護士)に相談されることをお勧めします。
(4)まとめ
このように、リフォーム業者の破産というケースでは、既払金が重要な問題となってきます。工事開始前に一定の金額を支払うこと自体は珍しくないことともいえますが、その場合でも、支払う前払金が高額にならないようにすること、また、工事途中のタイミングで支払いを設定する場合には、見込まれる工事の進捗状況と支払額とを適切な対応関係にすることが大切でしょう。