トランプによる45%関税で、中国のGDPはマイナスに
「1つの中国」に対してトランプ次期大統領が疑問を投げかける発言を行うなど、足もとでも米中の緊張感が高まりかけている。もともと、トランプ氏は選挙戦から対中強硬姿勢を取っており、彼の大統領選挙での勝利は、米国での対中感情の高まりを映すものとも捉えられる。
こうした状況も背景に、トランプ氏が意思を貫徹していくのであれば、国内景気の伸び悩みや不良債権処理で苦しむ中国には、新たな難題が降りかかることになろう。中国経済の現状を踏まえ、今後起こるべく中国経済の崩壊を考察していきたい。
トランプ VS 中国の最大のポイントは、トランプ氏が公言してきた中国に対する45%の関税措置となろう。これが公約どおりに実施された場合は、米中での貿易戦争に発展する可能性は非常に高い。2015年、米国の中国向け輸出額は1162億ドルで、輸出総額の7.7%に相当する。
一方、中国の米国向け輸出額は4830億ドルの規模であり、輸出に占める米国比率は18%とトップになっている。貿易戦争となった場合、米国でのマイナス影響も大きいが、明らかに中国のマイナス面が大きい。
大和証券の試算によると、仮に中国が45%の関税を課せられた場合、中国の対米輸出は年間で87%に当たる4200億ドルが減少するとしている。また、中国の乗数効果を1.84倍と仮定し、最終的にGDPの4.82%が失われると算定している。
現在、中国のGDP成長率はここ3四半期6.7%(前年同期比)が続いているが、この成長率に関しては、かさ上げ疑惑が絶えない。
実質的には4~5%成長、もしくはすでにマイナス成長との見方もあることから、トランプ氏の主張のように45%の関税が課せられれば、中国のGDPはマイナス成長に陥る現実味が高まることになる。
資金の流出も加速・・・AIIBも停滞へ
中国にとってのさらなる問題は、対内直接投資の引き揚げが加速する可能性である。2015年末時点で、中国の対内直接投資ストックは2兆8420億ドルとなっている。大和証券の試算では、15%が本国に引き揚げられた場合、中国の国際収支から4260億ドルの資本流出が見られ、これは、GDPの約4%、外貨準備の13%に相当する。
仮に、中国以外の対米輸出の関税率が低く抑えられれば、中国から生産拠点を他の新興国に移す動きも活発化し、資本流出の規模は一段と膨らむことになる。
その場合、世界の製造拠点としての中国の役割は完全に終わりを告げることになる。過剰な生産能力問題が一段とクローズアップされることになり、不良債権問題が一気に表面化する公算もあろう。
IMFの指針によれば、中国にとって安全といえる外貨準備の最少額は2.8兆ドルとされているが、上の推計からは、一気に当該水準を割り込むことにもなる。
さらに、中国からの資金流出に伴い、人民元の下落ピッチも早まることになろう。人民元の下落に伴って、中国が目指す一帯一路政策の根幹を成すAIIBで主導権が握れなくなる公算も大きい。