今回は、米国の「米国第一主義政策」が中国経済崩壊を招く理由を見ていきます。※本連載は、金融情報全般を扱う大手情報配信会社、株式会社フィスコ監修の『FISCO 株・企業報 2017年春号 今、この株を買おう』(実業之日本社)の中から一部を抜粋し、中国経済の危うさと、日本経済に与える影響、世界経済への波及などを検証していきます(執筆:株式会社フィスコ所属アナリスト・田代昌之氏)。

資金流出は止まらず、逃避資金の大半はドル資産へ

この人民元の下落に関してだが、中国の外貨準備高が足元で再度急減してきている。2015年11月から2016年1月にかけては、前月比2%を超える外貨準備高の減少が続き、中国株は大幅な下落に見舞われた。上海総合指数の下落率は、2016年1月の1カ月間で25%に達した。

 

2016年11月、外貨準備高の前月比減少率は再度2%を超え、12月も1.3%減という状況になってきている。

 

これは、中国からの資金流出に伴う元売りの影響を緩和するため、中国人民銀行が外貨準備を取り崩していることが背景にある。中国では2016年4月から輸入関税を大幅に引き上げ、爆買いによる資金流出を抑える政策をとっているが、それでも資金流出はとどまる様子が見られない。

 

当局の取り締まりをくぐり抜けての資本逃避の動きが依然として続いており、逃避資金の大半はドル資産へと変化している。

外貨準備高の大半は、為替介入や損失補填に使えない

米国の新大統領となるトランプ氏は米国第一主義を掲げており、金融規制の緩和や利上げの実施などから、今後も一段と中国からの資金流出は続くことになろう。

 

トランプ氏が次期大統領に決定した11月に外貨準備が一段と減少していることは、今後のさらなる外貨準備の減少を想定させる。12月も外貨準備は前期比1%を超える減少になっている。

 

先にも示したIMFの指針、中国にとって安全といえる外貨準備の最少額2.8兆ドルに関して、目先的に2%程度の減少率が続くようであれば、2017年3月にはこの危険水域に足を踏み入れてしまうことになる。

 

さらにショッキングな状況を想定させるものとして以下の図表を見てみたい。

 

 

日本では米国債が外貨準備の9割以上を占めているのに対して、中国ではそれが3割程度であることに加え、市中銀行の保有する外貨もカウントされているなど、そもそも外貨準備高の過半は為替介入や損失補填に充てられない資金と想定される。為替介入が行える実質的な外貨準備とされている米国債保有額の推移を見たものが以下の表となる。

 

 

外貨準備以上のペースで保有額は減少しており、2015年末以上に深刻な状態とも受け止められよう。前月比の減少率は、10月には3%台、11月には一気に6%近い水準まで拡大している。

 

トランプ大統領の誕生が減少スピードを拡大させた面は強いといえる。実質的な為替介入可能資金の急速な減少で、今後は資金流出を抑える術が一段と狭まっていく公算だ。

 

資金流出の危機に喘ぎ、人民元を買い支える中国であるが、それでもトランプ氏は中国を為替操作国に認定しようとしている。今後、元安メリットも得られず、世界の製造拠点としての地位、ならびに最大の貿易相手国を失うといった、中国にとっての最悪のシナリオが現実味を帯びてくる可能性も高まってきている。

FISCO 株・企業報 2017年春号 今、この株を買おう

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