日本経済を蝕んだ「ゾンビ企業」の正体――「失われた10年」が示した資源配分のゆがみとは【公認会計士が解説】

日本経済を蝕んだ「ゾンビ企業」の正体――「失われた10年」が示した資源配分のゆがみとは【公認会計士が解説】
(※画像はイメージです/PIXTA)

1990年代のバブル崩壊後、日本経済は長期停滞に陥りました。この「失われた10年」は、単なる景気後退ではなく、経済の新陳代謝が停滞した構造的な問題として語られています。その象徴が、本来であれば市場から退出すべき企業が、金融機関の支援によって存続し続けた「ゾンビ企業」の存在です。こうした企業の延命は、一時的には雇用や金融システムの安定につながった一方で、成長企業への資金や人材の流れを阻害し、日本経済全体の生産性を低下させたとの指摘があります。日本が経験した「失われた10年」は、企業再編や資源配分の重要性を考えるうえで、今なお多くの示唆を与えています。公認会計士の岸田康雄氏が詳しく解説します。

なぜ銀行は支援を続けたのか

銀行が再建の見込みが乏しい企業への支援を続けた背景には、自己資本比率規制(バーゼル規制)の存在がありました。

 

企業を破綻させれば、不良債権として損失処理を行わなければならず、銀行自身の自己資本が減少します。その結果、自己資本比率規制を満たせなくなるリスクが生じるため、銀行には破綻処理を先送りするインセンティブが働きました。

 

その代表例が、

フォーベアランス(Forbearance):問題を認識しながら抜本的な処理を先送りすること
・エバーグリーン(Evergreening):新たな融資を繰り返して企業を延命させること

です。

 

こうした対応については、後年の研究で、日本の金融システムの健全化を遅らせた要因の一つであったと指摘されています。

成長企業ほど大きな影響を受けた

ゾンビ企業の問題は、それ自体の非効率性だけではありません。

 

より深刻なのは、健全な企業の成長機会を奪ったことです。

 

ゾンビ企業が市場に残り続けることで競争が過剰となり、採算を度外視した価格競争が続けば、健全企業の利益率は低下します。また、本来であれば生産性の高い企業へ移るはずの人材が非効率な企業にとどまり、労働市場の新陳代謝も進みにくくなります。

 

研究では、成長性や投資意欲の高い企業ほど、ゾンビ企業の存在による悪影響を受けていたことが示されています。

 

こうした影響は、建設業、不動産業、サービス業、小売業など国内需要型の産業で特に大きくみられました。一方、国際競争にさらされる製造業では、競争圧力が強かったこともあり、ゾンビ企業の割合は比較的低かったとされています。

次ページ「創造的破壊」が止まった日本経済

人気記事ランキング

  • デイリー
  • 週間
  • 月間

メルマガ会員登録者の
ご案内

メルマガ会員限定記事をお読みいただける他、新着記事の一覧をメールで配信。カメハメハ倶楽部主催の各種セミナー案内等、知的武装をし、行動するための情報を厳選してお届けします。

メルマガ登録
会員向けセミナーの一覧