1990年代のバブル崩壊後、日本経済は長期停滞に陥りました。この「失われた10年」は、単なる景気後退ではなく、経済の新陳代謝が停滞した構造的な問題として語られています。その象徴が、本来であれば市場から退出すべき企業が、金融機関の支援によって存続し続けた「ゾンビ企業」の存在です。こうした企業の延命は、一時的には雇用や金融システムの安定につながった一方で、成長企業への資金や人材の流れを阻害し、日本経済全体の生産性を低下させたとの指摘があります。日本が経験した「失われた10年」は、企業再編や資源配分の重要性を考えるうえで、今なお多くの示唆を与えています。公認会計士の岸田康雄氏が詳しく解説します。
なぜ銀行は支援を続けたのか
銀行が再建の見込みが乏しい企業への支援を続けた背景には、自己資本比率規制(バーゼル規制)の存在がありました。
企業を破綻させれば、不良債権として損失処理を行わなければならず、銀行自身の自己資本が減少します。その結果、自己資本比率規制を満たせなくなるリスクが生じるため、銀行には破綻処理を先送りするインセンティブが働きました。
その代表例が、
・フォーベアランス(Forbearance):問題を認識しながら抜本的な処理を先送りすること
・エバーグリーン(Evergreening):新たな融資を繰り返して企業を延命させること
です。
こうした対応については、後年の研究で、日本の金融システムの健全化を遅らせた要因の一つであったと指摘されています。
成長企業ほど大きな影響を受けた
ゾンビ企業の問題は、それ自体の非効率性だけではありません。
より深刻なのは、健全な企業の成長機会を奪ったことです。
ゾンビ企業が市場に残り続けることで競争が過剰となり、採算を度外視した価格競争が続けば、健全企業の利益率は低下します。また、本来であれば生産性の高い企業へ移るはずの人材が非効率な企業にとどまり、労働市場の新陳代謝も進みにくくなります。
研究では、成長性や投資意欲の高い企業ほど、ゾンビ企業の存在による悪影響を受けていたことが示されています。
こうした影響は、建設業、不動産業、サービス業、小売業など国内需要型の産業で特に大きくみられました。一方、国際競争にさらされる製造業では、競争圧力が強かったこともあり、ゾンビ企業の割合は比較的低かったとされています。
公認会計士/税理士/行政書士/宅地建物取引士/中小企業診断士/1級ファイナンシャル・プランニング技能士/国際公認投資アナリスト(日本証券アナリスト協会認定)
平成28年度経済産業省中小企業庁「事業承継ガイドライン委員会」委員、令和2年度日本公認会計士協会中小企業施策研究調査会「事業承継支援専門部会」委員、東京都中小企業診断士協会「事業承継支援研究会」代表幹事。
一橋大学大学院修了。中央青山監査法人にて会計監査及び財務デュー・ディリジェンス業務に従事。その後、三菱UFJ銀行ウェルスマネジメント営業部、みずほ証券投資銀行部M&Aアドバイザリーグループ、メリルリンチ日本証券プリンシパル・インベストメント部不動産投資グループなどに在籍し、中小企業の事業承継から上場企業のM&Aまで、100件を超える事業承継とM&A実務を遂行した。現在は、相続税申告と相続・事業承継コンサルティング業務を提供している。
WEBサイト https://kinyu-chukai.com/
著者登壇セミナー:https://kamehameha.jp/speakerslist?speakersid=142
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