フランスで進む「企業側に配慮した規制緩和」
注目すべきは第一次ギリシャ危機のあと、経済の低迷に苦しむフランスを含む南欧諸国が、シュレーダー改革という言葉こそ使っていませんが、労働市場の規制改革に一斉に取り組み始めたことです。フランスや南欧諸国が経済で、これ以上ドイツに水をあけられないためには、労働規制改革は欠かすことのできない課題です。
フランスでは、二〇一四年に内閣入れ替えで登場したヴァルス首相のもと、マクロン経済・産業・デジタル相が中心になって、懸案の改革を進めています。フランスも左翼政権による労働規制改革です。
一六年二月には労働法の改革案が提示されました。企業の受注が減少した場合に解雇が可能になるとか、一日の労働時間の制限を一〇時間から一二時間に延長するといった、フランスとしてはかなり大胆な規制緩和が盛り込まれています。国会で激論が交わされるなか、学生からは若者の仕事を奪うことになるという反発が強く、激しい街頭デモが行われ、労働組合もストを繰り返しています。
運動方針をめぐって労組内部で対立も
ヨーロッパのデモには、黒覆面をかぶり鉄棒などを振りまわして手当たり次第に電話ボックスや商店のウインドーを叩き壊す破壊主義者がしばしば紛れ込み、デモを暴力化し荒れ狂います。テレビニュースを見ていると、今回のフランスのデモでも黒覆面がいたる所にまぎれ込み暴れています。
一方で、労組のストには今まで見られなかった変化も出ています。ストを強行する労働総同盟(Confédération Générale du Travail:CGT)の中央を批判する労働者も少なからずいて、投票でストへの不参加を決めています。そのためゼネストではなく、強硬派だけの部分ストが行われています。そのせいか政権側も強硬で、スト騒動が続くなか、五月一一日、労働法改革案は強行可決されました。この問題はまだまだもめそうです。