巧妙化する違法の「白タク」ビジネス
在日中国人による違法行為の典型例のひとつは白タクだ。中国では白タクを「黒ヘイチャー車」といい、少なくとも30年以上前から全国どこにでもあった。空港や駅のタクシー乗り場近くで顧客を待ち、値段を交渉して目的地まで正規より「高額」で送るのだ。
多くの中国人は「白タクがある環境」で育ったので、違法と認識しないまま受け入れてきた面もある。ある意味、社会インフラの一部を担っていたといってもいい。中国では正規タクシーの列に並ぶと、あまりに待ち時間が長すぎるため、多少料金が高くても利用する人がいたのだ。
しかし現在、都市部では白タクを見かけなくなった。中国では「DiDi」などの配車サービスが増え、価格、車種、オプションサービスを顧客が自由に選択できる。
「高級車、ミネラルウォーターつき」など、状況によって利用者が使い分ける。同じ距離・ルートでも選択によって料金は異なる。選択肢と価格はリスト化され、料金も明瞭だ。そのため、利用者をまちぶせする「アナログ的な白タク」はほとんど無用になった。地方の空港で多少見かけるが、引っかかるのは外国人観光客だけだ。
逆に、かつて日本では白タクはあまり存在しなかった(皆無だったとはいわない)。多くの日本人にとって、白タクは東南アジアなど海外旅行に行ったときに乗るもの、という感覚だ。
10年ほど前、中国からの訪日客が団体旅行中心の頃は、白タクも個人レベル、知人間の受発注が主だった。中国のSNS上で、知り合い(顧客)とやりとりし、料金を決め、決済までしていた。しかし、爆買いブームが去り、団体より個人旅行客が増えると、その需要を見込んだ白タクが出現するようになった。以前、中国にあったのと同じやり方を日本でも踏襲したのだ。
白タク需要が激増したことから、日本では違法だと知りつつも(あるいは違法と認識しないまま)、在日中国人の一部がチャンスと捉え、白タクビジネスに乗り出した。
取材してみようと知り合いに頼み、白タクをしている中国人とウィーチャットでつながったが、いざ連絡しようとするとブロックされていた。SNSの投稿を私に見られたり、取材されたりしたくなかったのだろう。
昼間は日本の会社で働き、夜間や週末だけ「白タクバイト」
個人客が白タクを使おうとする背景には、日本の正規タクシーの料金の高さ、言語の壁、さらには、日本には中国のような総合配車サービスが存在しないこと、などがある。
顧客は、そもそも(中国では一般的に利用されていたので)白タクを使うことに抵抗感や罪悪感はほとんどない。アプリを2〜3回押すだけで空港に迎えに来てくれるので、単純に便利だと思うだけだ。
サービスを提供する側も、誰でも簡単に参入できる上、SNSでのやりとりと決済は中国にいるときと同じ感覚なので、同じく抵抗感や罪悪感はない。コロナ禍の収束後、東京や大阪などの大都市で小型バスやバン、普通自動車で参入する人が多かった。
「会社組織」にしているところ、仕事が入るたびにSNSで運転手を募集するケースもある。中国の配車サービスと同じく、昼間は日本の会社で働き、夜間や週末だけ、アルバイト的に「白タク業」に手を染める中国人もいる。この構図は中国国内とまったく同じだ。
