孫を大切にするためにやめた「何でも引き受ける」生活
二人とも孫が嫌になったわけではありません。ただ、週末の予定を自分たちで決められず、長女一家の都合を優先し続ける暮らしに疲れていたのです。
翌週、夫婦は長女を自宅に呼びました。
「これからは、毎週預かるのは難しい」
秀一さんが切り出すと、長女は驚きました。
「そんなに大変だったの? いつも楽しそうだったから」
「孫たちと会うのは楽しいよ。でも、送迎や預かりが毎週になると、僕たちの予定が立てられない。お金の問題だけじゃなく、翌日まで疲れが残るんだ」
典子さんも続けました。
「こちらから会いたい日と、預かれる日を分けたいの。何でも頼まれるままだと、孫に会うことまで重荷になってしまいそうだから」
長女は当初、「共働きなのだから仕方がない」と不満そうでした。しかし、夫婦が旅行を取りやめたことや、典子さんが腰痛を抱えながら送迎していたことを知り、自分たちが頼りすぎていたと気づきました。
話し合いの結果、孫を預かるのは原則として月2回までとし、依頼は少なくとも1週間前に相談することにしました。習い事の送迎は長女夫婦で分担し、難しい日はほかの方法を探します。外出費や食費も、長女夫婦が事前に渡すことになりました。
こども家庭庁のファミリー・サポート・センター事業は、子どもの預かりや送迎を依頼したい人と、援助を行いたい地域住民をつなぐ仕組みです。また、放課後児童クラブは、保護者が就労などで昼間家庭にいない小学生へ生活と遊びの場を提供しています。祖父母の善意だけに頼らず、地域の支援を組み合わせることも選択肢になります。
翌月、秀一さん夫婦は延期していた温泉旅行へ出かけました。孫たちとは、その次の週末に会う予定を決めています。
「おじいちゃん、今度どこに連れて行ってくれる?」
孫に聞かれ、秀一さんは笑って答えました。
「一緒に相談して決めよう。でも、毎週は無理だからね」
以前なら口にできなかった言葉でした。
孫を最優先にすることが、必ずしも家族全員の幸せにつながるとは限りません。祖父母にも自分たちの生活があり、体力や時間には限りがあります。無理なく続けられる頻度や役割を家族で決めることが、孫との時間を長く楽しむために必要なのかもしれません。
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