偽・誤情報への新たな規制
2027年春に実施される統一地方選挙に間に合わせるため、2026年7月13日に偽・誤情報に関する規制を行う法律が制定(改正)されました(施行日は2027年3月1日)。
今回の法改正により、公職選挙法142条の7第1項として、新たに次の規定が設けられます。
〔公職選挙法 142条の7第1項〕
選挙に関しインターネット等を利用する者は、公職の候補者に関し虚偽の事項を公にし、又は事実をゆがめて公にして選挙の公正を害することがないようにしなければならない。
この新しいルールが意味するポイントは、大きく3つにわけられます。
(1)虚偽の事項
真実とはいえないこと、端的にいえば「ウソ」や「デマ」を指すと思われます。
(2)事実をゆがめて
完全に虚偽とまではいえないけれども、一部分を隠したり、はたまた別のところを極端に誇張したりするなどして、全体としてみると真実とはいえない事実を表現すること、といえるでしょう。
(3)選挙の公正を害する
上述の(1)虚偽をいう、もしくは、(2)真実とはいえない事実を公にすることによって、選挙のフェアプレーを害する行為です。「具体的に何票が減った」といった、はっきりとした因果関係までは求められないでしょうが、特定の候補者の得票に影響をおよぼす恐れがあるような情報が有権者の目に触れる状態を作れば、これに該当すると考えられます。
新ルールを具体的ケースで考える「なにがセーフで、なにがアウトか」
では、この新ルールはどのような場面で適用されるのでしょうか。3つの具体例からその境界線を探ります。
ケース1.選挙を間近に控えた候補者への虚偽投稿:アウト
衆議院議員選挙が翌週に迫るなか、消費税減税の政策を提唱していないA議員(立候補者)に対し、「A議員は、消費税減税の政策がよいと街頭演説で語っていた」と投稿した場合。これは、選挙期間中であり、すでに立候補している「候補者」に対して虚偽を述べているため、規定に反しているといえるでしょう。
ケース2.選挙期日が不明な段階での、政党支部長への虚偽解説動画:原則セーフ・例外あり
次の衆議院議員選挙がいつ行われるか不明な時期に、夫婦別姓賛成派の〇政党のB支部長に対し、「〇政党のB支部長は、夫婦別姓について反対であるとの政策を掲げています」と解説動画を動画掲載サイトにアップロードした場合。
おそらく、このケースでは新ルールに違反しないと思われます。公職選挙法では、「候補者」と「候補者となろうとする者」を書き分けており、B支部長は、いまだ特定の選挙について立候補届を出しておらず、「公職の候補者」ではないからです。
ただし、最高裁判所の判断があるわけでもないので安易な発想は危険です。なにより、B支部長が立候補届を出したときに、虚偽動画がアップロードされて残っていたとすれば、Bさんは「公職の候補者」になるので、1つ目のケース同様、このルールに反することになるでしょう。
また、仮に新ルールに違反しない場合であっても、名誉毀損罪、後述する虚偽事項公表罪などの犯罪が適用されるか否かは別途、問題になるといえます。
ケース3.政党に所属していない一般人の立候補表明への投稿:原則セーフ
今度の区議会議員選挙に立候補したいと本人は意思を持っているものの、まだ政党の政策委員、支部長にもなっていない段階のCさんに対し、本当は賛成であるにもかかわらず「Cさんは、原発再稼働には反対の立場!」と投稿した場合。
これも、アウトにはならないでしょう。決して、この行為は褒められたものではありませんが、Cさんは候補者ではないからです(別途、名誉毀損罪などの犯罪が適用されるかの検討が残るのはケース2と同様です)。
このように、今回の新規定は「立候補を正式に行った『候補者』」に対する虚偽等を対象としており、おのずと選挙運動期間(公示日や告示日から、投票前日まで)を想定したルールとなっています。なお、今回の公職選挙法の改正においては、このルールに反しても刑事罰は設けられていません。
