後悔ゼロの理由…自由を守るために残した“余白”
移住から5年が経った今も、浩二さんは「戻りたいと思ったことはない」と話します。
もちろん、地方暮らしに不便がないわけではありません。都市部に比べれば娯楽は少なく、専門的な医療を受けるには隣県まで行くこともあります。友人と気軽に会える距離でもなく、最初の1年は孤独を感じる日もありました。
それでも後悔がないのは、移住前に「理想」を詰め込みすぎなかったからです。畑を持つ、古民家を改修する、山奥で静かに暮らす。そうした夢はあえて選びませんでした。
体力が落ちても暮らせること、資産を守れること、必要なときに働ける余地を残すことを優先したのです。
内閣府『令和7年版高齢社会白書』では、高齢期の社会参加や人とのつながりが、生きがいや生活満足度に関係するとされています。浩二さんも、移住後に地域活動や小さな仕事を続けたことで、孤立を避けられたと感じています。
資産9,000万円は大きな金額ですが、55歳からの人生を考えれば、使い方を誤れば安心は長続きしません。浩二さんは、生活費、医療・介護への備え、住まいの修繕費、楽しむためのお金を分けて管理しています。年に一度は資産状況を確認し、取り崩しのペースも見直します。
「嫌な働き方をやめて、生活を選び直したという感覚です」
どこに住むか、どのくらい使うか、誰とつながるか、必要ならどう働くか。その設計が曖昧なままでは、自由は不安に変わります。
浩二さんの場合、無理に華やかな第二の人生を目指さず、自分が穏やかに続けられる毎日を選んだことが、後悔のない移住につながっているのです。
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