(※写真はイメージです/PIXTA)

FIREや早期退職には、自由な時間を得られる魅力があります。一方で、退職後の生活費、医療、地域との相性を見誤れば、理想の暮らしが長続きしないこともあります。地方移住も同じです。住居費の安さや自然環境だけで決めるのではなく、収入の見通し、交通、医療、人間関係まで具体的に考えることが欠かせません。

「会社に残る理由がなくなった」…55歳で選んだ地方移住

浩二さん(仮名・55歳)は、50歳のときに長年勤めたIT企業を退職しました。管理職として働き、収入は安定していましたが、会議や人事評価、終わりの見えない調整業務に疲れていたといいます。

 

退職金、運用資産、預貯金を合わせた資産は約9,000万円。住宅ローンは完済済みで、子どもも独立していました。

 

「これ以上、何のために働くのか分からなくなったんです」

 

そう話す浩二さんは、退職と同時に都市部のマンションを売却し、以前から旅行で訪れていた地方都市へ移住しました。選んだのは、海や山に近い場所ではなく、駅と総合病院、スーパーが徒歩圏内にある中古マンションです。自然の多い暮らしには憧れましたが、車がなければ生活できない場所は避けました。

 

浩二さんが重視したのは、派手な移住生活ではありませんでした。毎月の生活費を抑え、資産を取り崩しすぎず、自分の時間を持つことです。

 

地方に移ればすべてが安くなるとは考えず、管理費や修繕積立金、医療費、交通費まで試算しました。

 

総務省『家計調査(2025年)』によると、二人以上の勤労者世帯の消費支出は月平均で約33万円です。現役時代の暮らしをそのまま続ければ、退職後も支出は簡単には下がりません。浩二さんは移住後の生活費を月22万円前後に抑えることを目標にし、外食や旅行の頻度も無理のない範囲に決めました。

 

退職直後は、解放感がありました。朝の満員電車に乗らず、平日の図書館で本を読み、午後には川沿いを歩く。最初の数ヵ月は「毎日が休日」のようでした。

 

浩二さんは、そこで浮かれすぎることはありませんでした。早い段階で地域のボランティアに参加し、週に数回はオンラインで前職時代の知識を生かした業務委託の仕事も受けるようにしました。収入は月数万円程度ですが、生活の張り合いになりました。

 

「完全に何もしない生活は、たぶん自分には合わなかったと思います」

 

 

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