「過剰な甘やかし」の証拠
それから2年が経ち、孫は3歳になっていました。嫁は、夫(Aさんの長男)に近ごろの悩みを吐露しました。
「最近、子どもがすぐ癇癪を起すの。私たち夫婦ともにわりと大人しい性格だと思っているけれど、3歳だとそういう時期なのかしら? 早くに保育園にいれて、集団生活を学ばせたほうがいいかも」
危機感を覚えた息子から「父さん、毎日面倒をみてくれているのには本当に感謝しているけれど……お菓子や玩具、甘やかしすぎてないよね?」と問い詰められるも、Aさんは「そんなことはない、厳しくみている」と答えました。
ある日の夕方、たまには家族みんなで外食をすることに。孫がいるので、静かな料亭ではなく、ファミリー向けの和食のお店を選びました。
店に着くと、じっとしていられない孫が動きまわり、Aさんの長男と嫁が注意すると大泣き。さらに激しくなったのは、食事を終えてレジに向かったときでした。
会計横にある玩具を欲しがる孫に、「買わないよ」と嫁がいうと、床に寝転がって大泣きしました。そして、Aさんのもとへ行くと、「じぃじ、買って! 買って!」とせがみます。
「大丈夫」といっていたAさんのことは信じていたものの、Aさんの長男も嫁も、うすうす気づいていたことでした。けれど、子どもの行動は正直です。「じぃじにねだれば、なんでも買ってくれる」と孫自身が完全に学習していた事実が、家族の目の前で露わになった瞬間でした。
孫の成長、祖父母の貯蓄に多大な爪痕
厚生労働省の人口動態統計(概数)によると、2025年の日本の合計特殊出生率は1.14、出生数は67万1,236人と過去最少を記録しています。子どもが貴重な時代だからこそ、Aさんのように、孫一人にお金をかけすぎてしまう例も少なくありません。
こども家庭庁の「保育所等関連状況取りまとめ(令和7年4月1日)」によると、全国の待機児童数は2,254人です。その内訳をみると、3歳未満児が全体の90.6%を占め、特に1~2歳児が「83.3%」と圧倒的な割合を占めています。
保育園に入れない以上、祖父母に育児を頼らざるを得ない家庭は多いでしょう。だからこそ、預ける側と預かる側がしっかりとルールを決め、互いの教育方針を尊重し合う体制づくりが不可欠です。
家族会議の末、「本当に、みんなに合わせる顔がない……」とAさんは震える声で反省を口にしました。孫はひとまず認可外保育施設に預け、自治体の空き枠確認と申し込み内容の見直しを行うことに。
初孫への愛ゆえとはいえ、退職金の大半を二世帯住宅のリフォームに使い果たし、再雇用による収入機会も失ってしまったため、この2年間で手元の貯蓄は大きく目減りしました。
今後の年金受給見込み額は年間216万円(月額約18万円)。しかし、昨今の急激な物価上昇や、退職金が大きく減った現実を前に、Aさんの心には、慢性的な腰の痛みとともに、これからの生涯設計に対する強い不安がのしかかっています。
「孫とかけがえのない時間を過ごすことができたが、甘やかすことが愛情だと思い込んでいた」
静かになった平日のリビングで、Aさんは寂しさと後悔を噛みしめています。
〈参考〉
こども家庭庁:「保育所等関連状況取りまとめ(令和7年4月1日)」を公表します
三藤 桂子
合同会社ミコサポ
代表
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