「ばあばの家に行きたい」…喜びだったはずの週末
和子さん(仮名・73歳)は、夫と二人暮らしです。夫婦の年金収入は月25万円ほどで、貯蓄は約1,600万円。住宅ローンはすでに完済しており、生活に大きな不安はありません。趣味の園芸や友人との食事を楽しみながら、穏やかな毎日を送っていました。
転機になったのは、長男夫婦に二人目の子どもが生まれてからでした。共働きの長男夫婦は休日も慌ただしく、「子どもたちが、ばあばの家へ行きたいと言っている」と連絡をくれるようになります。
和子さんも最初は喜んで迎えていました。小学生と保育園児の孫は元気いっぱいで、家の中は一気ににぎやかになります。
「来てくれるだけで嬉しかったんです」
そう振り返る和子さんですが、回数は次第に増えていきました。月に一度だった訪問は隔週になり、やがて毎週末が当たり前になります。孫が来る前日は掃除や布団の準備、食材の買い出しに追われ、当日は朝から食事の支度と遊び相手。帰ったあとは大量の洗濯と片付けが待っていました。
夫も孫をかわいがっていましたが、長時間相手をすると疲れて昼寝をするようになります。その間も和子さんは台所に立ち続け、ようやく座れるのは夕方になってからでした。
時間があるように見えても、体力まで若い頃と同じではないことを実感したといいます。
それでも、長男夫婦は「助かるよ」「子どもたちも楽しみにしているから」と笑顔で帰っていきます。その姿を見るたびに、「疲れた」とは言えませんでした。
ある金曜日の夜、長男から「明日も行くね」とメッセージが届きました。画面を見つめた和子さんは、小さくつぶやきます。
「来てくれるのは嬉しい。でも……」
その先の言葉は、胸の奥にしまい込んだままでした。
