(※写真はイメージです/PIXTA)

年金だけで暮らす一人暮らしの高齢者の生活は、電話越しの声だけでは把握できません。食費や光熱費を切り詰め、住まいの不具合を我慢しながら、誰にも頼れず暮らしているケースもあります。

「大丈夫」の裏にあった現実――母が隠していた本当の暮らし

部屋を見回すと、ほかにも小さな我慢の跡がありました。蛍光灯は一本切れたまま、風呂場の換気扇は異音がするため使っていません。冷蔵庫には値引きシールの貼られた食品が並び、薬の袋の横には医療費の領収書がまとめて置かれていました。ぜいたくをしていたわけではなく、生活を成り立たせるために、あらゆる支出を少しずつ削っていたのです。

 

「どうして言ってくれなかったの」

 

由美さんがそう言うと、政子さんは視線を落としました。

 

「あなたにはあなたの生活があるでしょう。仕送りしてなんて言えないもの」

 

その一言で、由美さんは母の遠慮を初めて実感しました。困っていないのではなく、困っていると言えなかったのです。

 

内閣府『令和7年版高齢社会白書』では、65歳以上人口に占める一人暮らしの割合は男性18.3%、女性25.4%と推計されています。一人暮らしの高齢者が増えるなか、家族が生活の実態に気づきにくい状況は珍しくありません。

 

由美さんはその後、母と一緒に毎月の支出を確認しました。不要な契約を解約し、冬場の光熱費だけは由美さんが補うことにしました。さらに地域包括支援センターへ相談し、見守りサービスや配食サービスの利用も検討しています。政子さんは最初、「そこまでしなくていい」と遠慮しましたが、由美さんは「お母さんが我慢して倒れるほうが困る」と伝えました。

 

子どもに負担をかけたくないという気持ちから、本当の苦しさを隠してしまうこともあります。日常の中にある小さな変化や違和感は、生活の厳しさを示すサインである場合があります。そうした兆しに気づいたときには、遠慮せずに状況を確認し、必要に応じて支援や見守りを検討することが大切です。

 

 

 

 

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