(※写真はイメージです/PIXTA)

老後の住まいは、暮らす場所であると同時に大きな資産でもあります。特に都市部のタワーマンションは、売却すればまとまった資金になると考えられがちです。しかし、不動産は預金のように簡単に現金化できるものではありません。市場環境や管理費、修繕積立金、住宅ローンの有無、相続人の意向によって、思うように手放せないこともあります。

売れない不安、住み続ける負担…老後の資産が重荷に

夫婦が売却を真剣に考え始めたのは、美智子さんが体調を崩したことがきっかけでした。大事には至りませんでしたが、通院の回数が増え、今後の医療費や介護費を考えるようになります。

 

高層階での生活も、以前ほど快適には感じられませんでした。エレベーターの待ち時間、災害時の不安、広すぎる部屋の掃除。若い頃には魅力だったものが、少しずつ負担になっていました。

 

不動産会社に査定を依頼すると、提示額は夫婦が期待していた金額より低めでした。周辺相場は高いものの、同じマンション内の競合物件や今後の修繕費負担、買い手側の住宅ローン金利への警戒も影響していると説明されました。

 

「この価格で売るくらいなら、もう少し待ったほうがいいのでは」

 

幸一さんはそう考えました。しかし、待てば管理費や修繕積立金、固定資産税は払い続けなければなりません。国土交通省『マンション総合調査』でも、マンション居住者の高齢化や建物の老朽化、修繕積立金の不足は課題として示されています。資産価値があるマンションでも、保有し続けるコストは確実に発生するのです。

 

子どもたちに相談すると、長男は「売れるうちに売ったほうがいい」と言い、長女は「慌てて安く手放す必要はない」と言いました。

 

意見が分かれたことで、夫婦の迷いはさらに深まります。売れば安心できると思っていた住まいが、家族の間でも判断の難しい資産になっていたのです。

 

現在、夫婦は売却活動を続けながら、駅近の賃貸やシニア向け住宅も検討しています。すぐに高値で売ることばかりを考えるのではなく、住み替え後の生活費まで含めて試算するようになりました。

 

老後の不動産は、安心材料にもなりますが、判断を先送りすると負担になることもあります。売却するのか、住み続けるのか、子どもに残すのか。どの選択にもメリットとリスクがあります。

 

タワーマンションを所有しているからといって、必ずしも安心とは言えません。重要なのは、住み続けるためのコストと、売却時に直面する現実を早い段階で把握しておくことです。

 

 

 

 

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