(※写真はイメージです/PIXTA)

相続でまとまった資産を受け取ると、老後の安心につながる一方で、どう管理すればよいか悩む人も少なくありません。預金だけでは増えない、物価上昇に備えたい。そう考えて資産運用を始めること自体は自然な選択です。しかし仕組みを十分に理解しないまま大きなお金を動かすと、取り返しのつかない後悔につながることもあります。

「置いておくだけではもったいない」…相続後に始めた資産運用

和彦さん(仮名・63歳)は数年前に父を亡くし、預貯金や有価証券など約8,000万円を相続しました。父は堅実な人で、長年働いて蓄えたお金をほとんど使わずに残していました。和彦さん自身も会社員として働いていましたが、定年後の生活や妻との老後を考えると、父の遺産は大きな安心材料でした。

 

当初、和彦さんは相続した資産の多くを預金に置いていました。ただ、当時は低金利が続き、物価上昇への不安も耳にするようになります。金融機関で「預金だけでは実質的な価値が目減りする可能性がある」と説明され、和彦さんは一部を運用に回すことを考えました。

 

最初に購入したのは、海外株式や債券を組み入れた投資信託でした。当初は大きな問題もなく、値動きも比較的安定していたため、和彦さんは運用に対して前向きな印象を持つようになります。相場が良かった時期には評価額が増え、「このまま預金に置いておくよりいいのではないか」と感じるようになりました。

 

その後、和彦さんは個別株やテーマ型投資信託にも資金を移していきます。半導体、脱炭素、新興国関連など、当時注目されていた分野です。

 

さらに、短期間で大きな値動きを狙うレバレッジ型の商品にも手を出しました。説明は受けていましたが、値上がりしているときの印象が強く、下落時にどれほど大きく動くかまでは実感できていませんでした。

 

金融庁『つみたてNISA早わかりガイドブック』でも、「長期・積立・分散」による資産形成の重要性が示されており、投資ではリスクとリターンを理解したうえで、自分に合った運用を続けることが大切だとされています。

 

和彦さんも言葉としては知っていましたが、実際には相続資産の一部を短期間で大きく増やそうとし、特定の分野に偏った運用になっていました。

 

そして転機が訪れます。世界的な金利上昇や株価の調整で、保有していた商品が大きく値下がりしたのです。特にレバレッジ型の商品と一部の個別株は下落幅が大きく、怖くなって売却したものもありました。結果として、相続資産全体で1,000万円近い損失を確定させてしまったのです。

 

「父が遺してくれたお金だったのに……」

 

和彦さんは夜中に何度も口座画面を開き、眠れない日が続きました。損失そのもの以上につらかったのは、堅実だった父の資産を自分の判断で減らしてしまったという罪悪感でした。

 

 

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