眠れない夜のあと…見直した「守るお金」と「増やすお金」
不安が限界に達した和彦さんは、金融機関とは別の立場のファイナンシャルプランナーに相談しました。そこで指摘されたのは、運用商品の良し悪し以前に、資産の目的が整理されていないことでした。近い将来の生活費や医療費として残すべきお金まで、値動きの大きい商品に入れていたのです。
相談後、和彦さんは資産を三つに分けました。すぐ使う可能性のある生活防衛資金、10年以内に必要になりそうな医療・住宅関連費、そして長期で運用できる資金です。すべてを取り戻そうとして再びリスクを取るのではなく、まず眠れる状態に戻すことを優先しました。
国民生活センターには、高齢者の金融商品に関する相談が継続して寄せられています。退職金や相続資産など、まとまったお金を得たタイミングで複雑な商品を購入し、後になってリスクを十分理解していなかったと気づくケースもあります。金融商品取引法では、金融機関に対し、顧客の知識や経験、財産状況、投資目的に照らした勧誘を行うことが求められています。
和彦さんの場合、誰かにだまされたわけではありません。むしろ問題は、自分が許容できる損失額を考えないまま、「父のお金を少しでも増やしたい」と焦ってしまったことでした。
現在は、預金と低リスクの商品を中心に組み直し、長期運用に回す資金も一部に限定しています。
「増やせなかったことより、守れなかったことがつらかったんです」
和彦さんはそう話します。
相続資産は、人生を支える大切な土台です。しかし、大きなお金ほど一度の判断が心理的にも家計にも重く響きます。運用を考えるなら、商品名や利回りだけでなく、いつ使うお金なのか、どこまで減っても耐えられるのかを先に決めておくことが欠かせません。
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