老後の時間を守るため、必要だった話し合い
転機となったのは、洋子さんが孫を抱き上げた拍子に腰を痛めたことでした。大事には至りませんでしたが、数日間は家事もつらく、正明さんが買い物や食事の準備をすることになりました。
その間も娘からは「短時間だけでも見てもらえないか」と連絡があり、洋子さんは初めて「もう無理かもしれない」と口にしました。
厚生労働省『地域子ども・子育て支援事業』では、ファミリー・サポート・センター事業など、地域で子育てを支える仕組みも整備されています。家族だけで抱え込まない選択肢は、本来もっと早く検討できたはずでした。
夫婦は娘夫婦と話し合うことにしました。正明さんは「孫に会いたくないわけではない」と前置きしたうえで、定期的な送迎や毎週末の預かりは体力的に厳しいこと、自分たちにも予定や休む時間が必要なことを伝えました。
娘は驚き、「そんなに負担になっていたとは思わなかった」と涙ぐみました。親がいつも引き受けてくれるため、甘えている自覚が薄れていたのです。
その後、送迎の一部はファミリー・サポート・センターや民間サービスを利用し、祖父母が預かる日は事前に相談して決めることになりました。急な依頼も、まず夫婦の都合を確認するというルールを作りました。正明さん夫婦は、孫と過ごす時間を減らしたことで、むしろ会える日を楽しみにできるようになったといいます。
「孫は今でもかわいいです。でも、私たちの老後も一度きりなんですよね」
洋子さんはそう話します。家族を助けることは大切です。しかし、祖父母の時間や体力を当然のものとして扱えば、愛情はいつか疲れに変わります。
孫との関係を長く温かく続けるためにも、無理のない距離感を家族で話し合うことが必要なのかもしれません。
【関連記事】
■税務調査官「出身はどちらですか?」の真意…税務調査で“やり手の調査官”が聞いてくる「3つの質問」【税理士が解説】
■親が「総額3,000万円」を子・孫の口座にこっそり貯金…家族も知らないのに「税務署」には“バレる”ワケ【税理士が解説】
■「銀行員の助言どおり、祖母から年100万円ずつ生前贈与を受けました」→税務調査官「これは贈与になりません」…否認されないための4つのポイント【税理士が解説】

