「もう働かなくていいんだ」夫婦で年金18万円・65歳夫。気楽な老後のはずが、週刊誌を読んでも時計の針が進まない、独り飯も美味しくない日々…半年後、“時給1200円のバイト”を始めたシニアの現実

「もう働かなくていいんだ」夫婦で年金18万円・65歳夫。気楽な老後のはずが、週刊誌を読んでも時計の針が進まない、独り飯も美味しくない日々…半年後、“時給1200円のバイト”を始めたシニアの現実
(※写真はイメージです/PIXTA)

「60歳定年」が揺らぎ始めてから約20年。昨年2025年には経過措置が終了し、65歳までの雇用確保が完全に義務化された。年金の受給開始年齢は65歳だが、65歳からすぐに“完全な年金生活”へ移る人はいまや少数派で、「年金をもらいながら働く」人が増えている。69歳の岡山さん(仮名)もその一人だ。自分と妻のバイト収入に加え、夫婦の年金を合わせれば数字上はゆとりがあるものの、本人は「足りなかったらみっともない」という思いから、日々節制に励んでいる――。ルポライター・増田明利氏の著書『今日、年金暮らしになった』(彩図社)より、60代の“生活のリアル”をみていこう。

家呑み1回400円で十分、ささやかな楽しみは「うなぎ屋」

「サラリーマン時代はよく呑みに行っていたけど最近はすっかり弱くなりましてね。もっぱら家呑みです」

 

チューハイか第3のビールのロング缶が定番。肴はスーパーで買うハムカツや焼き鳥で十分。1回の呑み代は400円程度、これで文句はない。

 

「どこでどう調べたのか、証券会社からは投資セミナーのお誘い、リゾート物件販売会社からは別荘の案内、他にも一口馬主、ゴルフ会員権、高級外車、美術品などの売り込みがひっきりなしに来ますよ。一切、相手にしませんけどね」

 

退職金を増やそうとか、運用益で利益を得ようという考えは危ないと思うのだ。上手くいけばいいが、失敗したら誰かが責任を取ってくれるわけじゃないから。

 

「退職金を1円も使わないというのは不可能。だけど使う金額を抑えるのは工夫次第で可能。おじいちゃんになって金欠はつらいもの」

 

今のささやかな楽しみは、お互いの給料が出た週末。

 

「わたしの給料が出たら土曜日の夕飯は奮発して、妻を連れてうなぎ屋に行くんです。妻も給料が出るとホールのアップルパイとか生ドーナツなどをお土産に買ってきたりしてね。お互い『お疲れ様でーす』とやっている。これで幸せだよ、悪くないと思っている」

健康寿命まであと2年…年金制度の報道に他人事ではいられない

唯一、気掛かりなのは健康や体調のこと。間もなく70歳になる岡山さんは健康寿命と言われる72歳まで残り2年。色々な不調が出てくるかもと心配だ。奥さんもここのところ体重が増えてきていて血糖値が高めに振れており、時々だが膝痛が出ることがあるという。

 

「医療費は聖域だと思うけど、一方で生産的な出費ではないとも思う。できれば病院との付き合いは少ない方がいいでしょ」

 

なにはともあれ予防が大事。呑みすぎ、食べすぎは避ける。外出から戻ったら手洗いとうがいは必須。冬場の外出はマスクをして冷たい外気を吸わないようにする。

 

「何かおかしいと感じたら我慢せず病院へ行きます。早い処置でトータルの医療費を抑えられるから。妻とも平均寿命までは頑張ろうねと話しているんです」

 

だから、現行の年金制度は崩壊するという報道や評論を見聞きすると、不安になることがある。

 

「自分がまた40代に入ったばかりの頃は年金生活者が羨ましかったな。リタイアしたらのんびり暮らしたいと思った。だけど今は70歳まで働けとか年金の支給開始年齢を引き上げようとかいう話もあるじゃない。まだ50代の人たちは不安だと思いますね」

 

もしかしたら、自分たちが最後の逃げ切り世代なのかと思ったりもする。

 

 

増田 明利

ルポライター

 

 

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※本連載は、増田 明利氏の著書『今日、年金暮らしになった』(彩図社)より一部を抜粋・再編集したものです。
※本記事はノンフィクションルポルタージュであり、登場する人物のストーリーには脚色を加えていませんが、プライバシー保護の観点から氏名は仮名としてあります。

今日、年金暮らしになった

今日、年金暮らしになった

増田 明利

彩図社

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