「もう働かなくていいんだ」夫婦で年金18万円・65歳夫。気楽な老後のはずが、週刊誌を読んでも時計の針が進まない、独り飯も美味しくない日々…半年後、“時給1200円のバイト”を始めたシニアの現実

「もう働かなくていいんだ」夫婦で年金18万円・65歳夫。気楽な老後のはずが、週刊誌を読んでも時計の針が進まない、独り飯も美味しくない日々…半年後、“時給1200円のバイト”を始めたシニアの現実
(※写真はイメージです/PIXTA)

「60歳定年」が揺らぎ始めてから約20年。昨年2025年には経過措置が終了し、65歳までの雇用確保が完全に義務化された。年金の受給開始年齢は65歳だが、65歳からすぐに“完全な年金生活”へ移る人はいまや少数派で、「年金をもらいながら働く」人が増えている。69歳の岡山さん(仮名)もその一人だ。自分と妻のバイト収入に加え、夫婦の年金を合わせれば数字上はゆとりがあるものの、本人は「足りなかったらみっともない」という思いから、日々節制に励んでいる――。ルポライター・増田明利氏の著書『今日、年金暮らしになった』(彩図社)より、60代の“生活のリアル”をみていこう。

趣味なし、年賀状は2人だけ…定年半年で気づいた「暇」の辛さ

岡山さんは大学卒業後まず中堅の証券会社に就職、約22年勤めたが97年の金融危機でリストラされ運送会社に転職。60歳まで勤めて定年退職を迎えたが、その後5年間は嘱託で働いて完全退職、年金生活に入った。

 

「リタイアしたときは、もう働かなくていいんだ、あとは気楽にやっていこうと思っていたんです。だけど半年もしないで暇を持て余しちゃってね」

 

若かったときから趣味は特にない、スポーツも嫌い。ボランティア的なことにも興味なし。何か始めるのも面倒で毎日がつまらなかった。

 

「人付き合いも狭くなります。会社関係で今も交流がある人はいない。仕事で関わった他社の人もそう。サラリーマンの交際範囲は仕事から派生したものなんだよ。だから仕事を辞めたらサヨナラ。そういうことなんですよ」

 

小中高校は北関東の街で過ごしたから昔の同級生のことは何も知らない。懐かしさを感じて訪れたことは皆無。大学の同級生や同期生では少し交流があった人も数人いたが、60歳頃から徐々に減ってゆき、今は年賀状が来る人が2人だけ。

 

「弟、妹も成人して家庭を持つと、自分たちの生活が一番だからそう密な付き合いもなくなっていく。親が健在だったときは年に4、5回の行き来があったけど、亡くなってからは冠婚葬祭、法事、病気見舞いぐらいしか顔を合わせる機会がない」

 

孤立しているわけではないが人恋しいと思うときがあるのだ。

 

「今もそうなんですが妻はずっと1日3~4時間の短時間仕事を続けていて、勤務時間帯によっては、昼間ずっとわたし1人で家にいることがある。それが嫌でね」

 

奥さんは自治体から業務委託された図書館サービス会社のパートさん。司書補助として区立の図書館に派遣されている。書籍、CDの貸出、返却管理、蔵書の管理などがメインだが、映画会、お話し会などの運営もアシストしているそうだ。勤務時間は8時45分~19時15分の間で3部制。1日3時間30分~4時間就労している。

 

「中番というのかな、12時からのシフトだと家を出るのが11時10分頃。仕事を終えて帰ってくるのが16時半辺り、その間はわたし1人でポツンとしているのよ。つまらないよ、本当に」

 

 

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※本連載は、増田 明利氏の著書『今日、年金暮らしになった』(彩図社)より一部を抜粋・再編集したものです。
※本記事はノンフィクションルポルタージュであり、登場する人物のストーリーには脚色を加えていませんが、プライバシー保護の観点から氏名は仮名としてあります。

今日、年金暮らしになった

今日、年金暮らしになった

増田 明利

彩図社

人生100年時代といわれる現代。本当の年金生活を知るのは怖いかもしれないが、知っておいた方がよいし、そのためには当事者の声を聞くのが一番。このような思いで年金生活者の方々の声を集めてみた。 そこで実感したのが高…

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