(※写真はイメージです/PIXTA)

親が亡くなったあと、遺された家をどうするかは多くの家庭で避けて通れない問題です。特に都心のマンションは「価値ある資産」と見られやすく、相続人にとって安心材料に思えることもあります。しかし、不動産は持っているだけで管理費や税金がかかり、室内の状態によっては売却や賃貸に出すまでに想定外の負担が生じることもあります。

資産が負担に…相続後に見えた「家を遺す」難しさ

直樹さんがさらに驚いたのは、管理組合からの書類でした。大規模修繕に向けた修繕積立金の増額が議題に上がっており、今後の負担はさらに増える見込みでした。父はその書類を何度も読んだのか、封筒には赤い線が引かれ、余白に「売るべきか」「直樹に相談」と小さく書かれていました。

 

「相談してくれればよかったのに」

 

直樹さんは思わずつぶやきました。しかし父にとって都心のタワーマンションは、子どもに迷惑をかけないための備えでもありました。弱音を吐けば、せっかく選んだ住まいを否定されるように感じたのかもしれません。

 

相続では、預貯金だけでなく不動産も対象になります。民法では、相続人は被相続人の財産上の権利義務を承継します。マンションを相続すれば、管理費や修繕積立金、固定資産税などの負担も引き継ぐことになります。また、相続税の申告が必要な場合は、原則として相続開始を知った日の翌日から10ヵ月以内に申告・納付を行う必要があります。

 

直樹さんと妹は、室内の片付け、残置物の処分、管理会社への連絡、査定依頼を順に進めました。立地のよい物件だったため売却自体は可能でしたが、すぐに現金化できるわけではありません。管理費や固定資産税は売却まで発生し、室内の状態を整えるにも費用と時間がかかりました。

 

「父が遺してくれたものを、ありがたいと思う気持ちはあります。でも、家はただ受け取れば終わりではないんだと痛感しました」

 

国土交通省『マンション総合調査』でも、マンション居住者の高齢化や建物の老朽化、修繕積立金の不足などが課題として示されています。高齢の親がマンションに一人で暮らしている場合、資産価値だけでなく、日々の管理や将来の処分について家族で話し合っておくことが重要です。

 

直樹さんは父が残したメモを見返すたび、もっと早く住まいのことを聞いておけばよかったと感じています。都心タワマンという言葉から想像していた華やかさとは違い、そこにあったのは、老いと不安を一人で抱えた父の暮らしでした。

 

親が遺す家は、思い出であり、資産であり、ときに負担にもなります。元気なうちに住まいの維持費、管理状況、売却や住み替えの希望を共有しておくことは、相続する側だけでなく、遺す側の安心にもつながるのかもしれません。

 

 

 

 

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