父が遺した都心タワマン…安心していた長男が見たもの
会社員の直樹さん(仮名・54歳)は、父・昭男さん(仮名・82歳)が亡くなったあと、相続手続きのため、父が一人で暮らしていた都心のタワーマンションを訪れました。母はすでに他界しており、昭男さんは10年ほど前に郊外の戸建てを売却し、駅近の高層マンションへ住み替えていました。
「父は昔からきれい好きでしたし、都心のマンションなら売るにしても困らないだろうと思っていました」
昭男さんは元会社員で、年金と退職金、戸建ての売却資金をもとに暮らしていました。直樹さんも年に数回は電話をしていましたが、父はいつも「何も困っていない」「管理も楽だから安心だ」と話していたため、詳しい生活ぶりまでは確認していませんでした。
相続人は直樹さんと妹の二人。二人とも持ち家があり、父のマンションに住む予定はありませんでした。駅近で眺望もよく、管理状態も悪くない物件だったため、当初は売却して相続税や諸費用に充てるつもりでした。
ところが玄関を開けた瞬間、直樹さんは言葉を失います。廊下には未開封の郵便物が積まれ、リビングには通販で購入したままの健康食品や家電が箱のまま置かれていました。キッチンには使い切れないほどの保存食が並び、寝室の押し入れからは、同じ種類の肌着やタオルが何十枚も出てきたのです。
「高価なものが散らかっていたわけではありません。ただ、父が一人で不安を抱えながら暮らしていたことが、部屋全体から伝わってきました」
総務省『家計調査(2025年)』によると、65歳以上の単身無職世帯では、可処分所得約11.8万円に対し、消費支出は約14.8万円となっており、平均で毎月約3.0万円の不足が生じています。
昭男さんの場合、都心マンションを所有していたため資産はありましたが、管理費、修繕積立金、固定資産税は毎年かかります。資産価値のある住まいに暮らしていても、日々の不安や孤独が消えるわけではありませんでした。
