(※写真はイメージです/PIXTA)

物価上昇や人手不足が続くなか、企業による賃上げは日本経済の重要な課題となっている。経済産業省はこのほど、「賃上げ促進税制」御利用ガイドブック(令和8年6月15日公表版)を公表した。今回の改訂版は、令和8年度税制改正の内容を反映したもので、全企業向け税制と中堅企業向け税制の対象・適用要件・税額控除の仕組みが改めて整理されている。新しいガイドブックから、変更点を読み解いてみたい。※本連載は、THE GOLD ONLINE編集部ニュース取材班が担当する。

教育訓練費の上乗せ措置は令和7年度末で廃止

全企業向け税制・中堅企業向け税制(令和8年3月31日までに開始する事業年度分)に共通して設けられていた教育訓練費の上乗せ措置は、令和7年度末をもって廃止された。

 

令和8年度税制改正大綱では、教育訓練費の増加額を控除額が上回るケースがあるという会計検査院の指摘を踏まえ、この上乗せ措置を廃止するとしている。これは全企業向け・中堅企業向けだけでなく、中小企業向けを含む全区分共通の措置だ。

 

中堅企業向け税制の令和8年4月以降の期間では、この上乗せ措置が適用されないため、教育訓練投資を積極化させても税額控除率は上乗せされない。

 

この点について八ツ尾氏は、「リスキリングなどの人材投資を考えている企業にとってはマイナスだ」と指摘する。

給与等の範囲、補塡額の取扱いは従来どおり整理

ガイドブックでは、賃上げ促進税制における給与等支給額の範囲についても解説が行われている。

 

社会保険適用促進手当や、企業による奨学金の代理返還に充てる経費、育児休業期間中の手当などは、いずれも給与等支給額に含めることができる。

 

一方、助成金や補助金を活用している企業は注意が必要だ。給与負担の軽減を目的とする補助金等の交付額(補塡額)がある場合、その分を給与等支給額から控除して増加率を計算しなければならない。

 

ただし、雇用調整助成金など雇用保険法上の雇用安定事業に基づく助成金や、診療報酬・介護報酬等の役務提供の対価として支払を受ける金額は補塡額には含まれない。

 

企業によっては賃上げ要件を満たしていると考えていても、補塡額を反映した結果、税額控除の適用要件を満たさなくなるケースもあり得る。

 

八ツ尾氏は実務上の注意点として、「消費税以外では、この賃上げ税制について『税理士職業賠償責任保険』の事例が多いといわれている。税理士が申告書を作成する際に、同制度の適用の検討を怠っていたという事例が多くあるので要注意である」と指摘する。

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