「もう無理だ」…ローン返済計画に立ちはだかる壁
順調に返せるはずだった住宅ローンですが、子育てが終わったとはいえ、50代後半からは別の出費がかさみました。
想定外だったのが、相次ぐ親の介護です。江藤さん夫婦はどちらも一人っ子。親の介護や看取りに伴う出費が続きました。また、嬉しいことに長男に続き次男の家族にも孫の誕生が相次ぎましたが、可愛さのあまりお祝い金やプレゼントを奮発し、支出がかさみました。
60歳で博さんが受け取った退職金は約1,000万円。しかし、介護費用や孫にかかる費用、マイカーや家電の買い替えなどで大半が消え、住宅ローンの繰り上げ返済に充てられたのは、わずか200万円程度でした。
さらに、博さんは60歳以降も再雇用で勤務を続けましたが、月収は15万円程度に減少しました。その後は、年金を受け取り始めますが、月額で約21万円。総務省「家計調査」によると、2025年の夫婦高齢者無職世帯の実収入は月平均25万4,395円なので、それを大きく下回る金額です。
毎月のローン返済(約9万円)に加え、数年ごとに必要となる外壁や屋根の修繕に備えた貯蓄や、固定資産税の負担が重くのしかかります。その結果、博さんは70歳近くになっても、身体に鞭打って仕事を続けなければなりませんでした。
しかも皮肉なことに、孫は成長するにつれ部活や塾、友達付き合いで忙しくなり、ほとんど泊まることはなくなったのです。
「一体、何のためにこんな生活をしているんだ……」
家を売却…失った莫大なお金
博さんは「もう限界だ」と、終の棲家になるはずだった一戸建ての売却を決断します。
しかし、売却時の築年数は30年。地方の戸建て市場は厳しく、建物の価値はほぼゼロ、土地代だけの評価となり、売却価格はわずか850万円でした。残債約900万円を返済するには売却額だけでは足りず、仲介手数料などの諸経費も合わせると100万円近い持ち出しに。70歳まで働いてギリギリ貯めた手持ちの貯金を切り崩してなんとか補填したため、手元の資金はほぼ底を突いてしまいました。
頭金、リフォーム代、これまでの返済総額に加え、固定資産税や外壁塗装などの維持費を計算すると、15年間で2,000万円以上の大金を失った計算になります。
「家を買っても意味がなかった……むなしくなりましたよ」

