「免許返納したいけれど、できません」76歳男性の苦悩
「自分でも運転にひやひやすることがある。でも、免許返納はできないんですよ。だって、車がないと病院にも買い物にも行けないから。それに、家を売って駅近くのマンションに引っ越そうにも、この家、売りに出しても二束三文にしかならないって言われてしまって」
そう力なく笑うのは、都心から2時間弱のニュータウンに暮らすAさん(76歳)。Aさんが現在の家を購入したのは、今から約35年前、バブルの熱気がまだ残る頃でした。
第一子の誕生を機に、郊外の自然豊かなニュータウンに、庭付き一戸建てを購入。駅からはバスで15分、急な坂道の上にあるけれど、見晴らしは最高です。
その生活に、車は欠かせませんでした。平日は妻がミニバンでAさんを駅まで送り迎え、週末は家族でドライブ。子ども3人がのびのび育つ、誰もが羨む理想の家族像そのものでした。
「郊外の広い家×車×子ども」――当時、この選択は間違いなく100点満点の大正解でした。しかし、35年という歳月はすべてを変えてしまいます。
子どもたちは独立して都心のマンションへ。夫婦2人には広すぎる4LDKの家と、生い茂る庭の手入れが重荷になりました。そして何より深刻なのが、加齢に伴う運転への不安です。
「そろそろ車を手放して、駅近の家に引っ越したい」。それが数年前からの願いです。しかし、そこには高すぎる壁が立ちはだかっていました。「家が売れない」のです。

