(※写真はイメージです/PIXTA)

離れて暮らす親から「元気にしている」と言われると、子どもはその言葉を信じたくなります。特に高齢の親は、子どもに心配をかけまいとして困りごとを隠すことがあります。一人暮らしの高齢者の生活は、年金額や電話越しの声だけでは分かりません。久しぶりに訪ねた実家で、思いがけない現実に気づくケースもあります。

暖房の代わりに使っていたカイロ…母の本音

「これ、どうしたの?」

 

朋美さんが尋ねると、節子さんは少し困ったように笑いました。

 

「暖房をつけると電気代が高いでしょう。カイロなら安いし、こたつに入っていれば何とかなるのよ」

 

その瞬間、朋美さんは胸が詰まりました。電話では「寒くない」と言っていた母が、実際には暖房代を気にしてカイロで冬をしのいでいたのです。押し入れには、着古したセーターや毛布が何枚も重ねて置かれていました。台所の流しには、冷たい水を使うのがつらいのか、洗い物が少し残っていました。

 

「どうして言ってくれなかったの」

 

朋美さんがそう言うと、節子さんは視線を落としました。

 

「あなたに迷惑をかけたくなかったの。仕送りしてなんて言えないでしょう」

 

節子さんは、生活保護や自治体の支援制度についてもよく知りませんでした。困ったときは子どもに頼るか、自分で我慢するか。その二つしか選択肢がないと思い込んでいたのです。

 

厚生労働省の生活困窮者自立支援制度では、経済的な困りごとを抱える人に対し、自治体の相談窓口で支援につなげる仕組みが設けられています。また、介護保険制度では、要介護認定だけでなく、要支援認定を受けることで訪問介護や介護予防サービスなどを利用できる場合があります。高齢の親が一人で家事や生活管理に不安を抱えているなら、地域包括支援センターへ相談することも選択肢になります。

 

朋美さんはその後、母と一緒に家計を確認しました。年金月12万円の中から、食費、光熱費、医療費、固定資産税、冠婚葬祭の積み立てまで捻出しており、余裕はほとんどありませんでした。母が節約していたのは、単なる倹約ではなく、生活を成り立たせるための必死の調整だったのです。

 

「大丈夫って言葉を、そのまま受け取っていた私も悪かったのかもしれません」

 

現在は、地域包括支援センターに相談し、見守りサービスや配食サービスの利用を検討しています。朋美さんも無理のない範囲で生活費を補い、夏場・冬場の光熱費だけは心配せず使ってほしいと母に伝えました。

 

「大丈夫」という言葉の裏には、遠慮や我慢があることもあります。電話だけで安心せず、冷蔵庫や室温、郵便物、支払い状況など、暮らしの変化を確認することが大切です。

 

 

 

 

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