今回は、大統領選を読み違えたアメリカの「リベラルなメディア」について見ていきます。※本連載は、評論家・作家として活躍する宮崎正弘氏の著書、『トランプノミクス 日本再生、米国・ロシア復活、中国・EU沈没』(海竜社)の中から一部を抜粋し、全米で巻き起こった「トランプ現象」の真実に迫ります。

ワシントンのジャーナリストは九割が民主党支持!?

次の大統領選挙の予測はインドにお伺いをたてなければならない。投票日の十日前、16年10月28日にインドの新興企業が開発した「モウグルA」が過去の記録、2000万件のデータを分析した結果、トランプが勝つと正確に予想していた。同社はそれをCNBCに送ったが、米国のテレビ局は無視した。

 

なにしろAI(人工知能)が囲碁・将棋・チェスでチャンピオンに勝つ時代である。これがまぐれ当たりなどと批判することはできない。

 

それにしても日本のマスコミ予測は痛ましいほどに全敗だった。驚くほどの予測外れという出来事は日本でも米欧同様に、左翼ジャーナリズムが完敗したことを意味する。

 

日本のマスコミは左翼偏向のニューヨークタイムズ、ワシントンポストやリベラル派の牙城ボストングローブ、そして民主党一色のロスアンジェルスタイムズなどを基準にして報道するから往々にして予測の間違いをやらかすのである。

 

ニューヨークタイムズ本社
ニューヨークタイムズ本社

 

政治学者の藤井厳喜氏は日本の新聞を「米国メディア論調のコピペ」と批判した。

 

テレビ報道の左翼偏向はもっとひどく、CNN、ABC、NBCは左翼の牙城で、米国のマスメディアの偏り方は、日本のメディアの左翼偏向よりひどい状況にある。なにしろワシントンのジャーナリストは九割が民主党支持である。

 

ウォール街の投資家やトレーダーらも直後には「こんなはずではなかった」と周章狼狽ぶりを示した。

 

そのムードが日本に跳ね返り、翌日は919円の下落を演じた株式市場だったが、円高にぶれたのは瞬間的で翌日には五円もの円安に転じ、四週間後には117円台まで円安となった。翌々日の日本の株式は1092円という破天荒の高騰を示した。

 

いってみれば、エスタブリシュメントの既得権益をまもるヒラリーと共和党保守派はおなじ穴の狢だから、アウトサイダーを排撃するのは自然の流れと見たからである。

事前の予想に反し、株式市場はトランプ政権を歓迎

ところがトランプ当選で下落するはずだったウォール街で株は高騰し、史上最高値をつけ、12月14日には場中で二万ドルを突破した。インフラ投資に5500億ドルを投じるというトランプの「成長戦略」が本気で実施されるとなれば沈降一途だった米国景気はよくなると市場が判断したからだ。

 

直接的な原因はトランプが「ドッド・フランク法」(消費者保護法)の廃止を主張していたからである。市場はトランプの政策を歓迎し、「第二のレーガン」となるかもしれないと一転して期待を始めた。これはパラダイム・シフトである。

 

エコノミストや経済シンクタンクもみごとに予測を外した。

 

トランプがなれば「円高、株安」になると言っていたが、実際には一割以上の円安にぶれ、しかも株はNY市場が史上空前の高騰。つられて日本株も上昇した。

 

先行きの予断は難しいが、短期的に米国経済は活況を呈し、「最初の百日で変革の方向性を鮮明にする」とトランプが言明しているように、意外に幸先よきスタートとなったのである。波に便乗する日本株も22000円をめざす展開となるだろう。

 

そして当選から一週間後の11月17日、訪米した安倍首相はトランプタワーを訪問し、一時間半におよぶ非公式会談を行った。外国指導者と当選後の異例な接見は日本が一番となった。

トランプノミクス 日本再生、米国・ロシア復活、 中国・EU沈没

トランプノミクス 日本再生、米国・ロシア復活、 中国・EU沈没

宮崎 正弘

海竜社

2017年1月20日、ついにトランプがアメリカ合衆国大統領に就任します。TPPへ反対し、国内政策に集中するなど、今までのアメリカとは異なる姿勢を見せるトランプは、アメリカをどう変えるのでしょうか。そしてトランプノミクスに…

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