日銀の利上げに伴い、長らく続いた低金利時代が終わりを迎えつつあります。そんななか、焦りを感じているのが数年前に「変動金利」で住宅ローンを組んだ人たちです。「固定金利は損」「変動金利一択」というネット上の風潮や営業マンの言葉を信じ、ギリギリの資金計画でマイホームを購入した結果、金利上昇によって家計が立ち行かなくなるケースが急増しています。5,800万円の住宅ローンを組んだ33歳男性の事例をもとに、CFPの市川貴博氏が解説します。
「変動金利一択」の空気に飲み込まれた
2021年当時、住宅ローンを取り巻く環境は現在とは大きく異なっており、SNS上では「固定金利は損」「変動金利一択」「住宅ローンは借りられるだけ借りたほうが得」という情報が溢れていました。
住宅会社の担当者も同じように「固定金利は高いですからね」「みなさん変動金利を選ばれています」「変動金利が上がったら固定金利に借り換えればいいですよ」と説明していました。
周囲で住宅を購入した友人たちも変動金利を選んでいたため、「それなら変動金利で心配ないだろう」と、Aさんもそう考えるのは自然な流れだったのかもしれません。
こうしてAさんは、変動金利0.65%、借入額5,800万円、40年返済で住宅ローンを契約しました。
住宅ローン契約後には、担当者から「住宅ローン減税がありますから、繰上げ返済はしないほうがお得ですよ」「手元資金は残しておいたほうがいいです」とアドバイスを受けました。
Aさんも「住宅ローン減税はローン残高が大きいほうが得だし、繰上げ返済などは余裕ができたら考えればいい」と納得でした。
しかし、そもそもAさんにはライフプランという概念がなく、将来子どもが増えたり、妻が働けなくなったり、金利が上昇したりといった、家計に直結する人生における「お金のシミュレーション」などは考えたこともありません。
住宅購入時の関心は「どんな家に住むか」だけで、「40年間どのように返済するか」ではなかったのです。
株式会社エフアンドエス・エキスパート 代表取締役
CFP®/1級ファイナンシャル・プランニング技能士/貸金業務取扱主任者
1970年静岡県熱海市生まれ。1998年より住宅会社の営業スタッフとなり、トップセールスとして活躍する傍ら顧客の住宅ローンとライフプランを真剣に考えるようになり、2000年からFPとしても活動し、以来1000件を超す住宅ローン相談と斡旋を経験する。
2011年には住宅会社を退職し、ファイナンシャル・プランナーとして独立開業。100%買い手側(顧客側)の立ち位置で住宅購入のアドバイスや家計相談をスタート。FPとして幅広く活動する中で、同年に生活経済研究所®長野にも参画。現在は事務局長に就任し全国で労働組合コンサルタントとしても活動中。
また2022年4月より日本FP協会静岡支部支部長に就任、2024年4月からは東海ブロック副ブロック長も兼務しており、ファイナンシャル・プランニングの普及・啓蒙活動にも注力している。
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