最近耳にすることが増えた「残クレ住宅ローン(残価設定型住宅ローン)」。月々の返済額を抑えられるというメリットが強調されがちですが、安易に利用すると家計を揺るがす大きな危険性があります。本記事では、FPの市川貴博氏が残クレ住宅ローンのリスクについて、全額住宅ローンを組んだ場合との比較シミュレーションを交えて解説します。

総支払額のシミュレーション(60年住んだ場合)

「今から60年間生きた」という前提で、具体的な金額をシミュレーションしてみましょう。

 

残価設定型住宅ローンの場合、リバースモーゲージが1階部分、契約期間中の住宅ローンが2階部分に乗ります。住宅ローンは元金と利息を返済しますが、リバースモーゲージには元金返済という概念がありません。

 

つまり、残価を設定し、その残価部分は元金を支払わない前提となるため、その残価に対してかかる利息のみを毎月支払っていくことになります。

 

全額を住宅ローンで借りる場合に比べて、支払いは確かに安くなります。しかし、この残価部分についても利息を支払うため、実は利息の支払いという概念において1階部分は元金が減らず、2階部分だけ元金が減っていきます。その結果、利息の支払いは全額を住宅ローンとした場合よりも増えてしまうのです。

 

全体の金額が4,000万円の物件だったとして、住宅ローン部分に2,000万円、リバースモーゲージ部分(残価)として2,000万円を設定してみました。

 

まず、住宅ローンに関しては、残価設定型住宅ローンを扱っている楽天銀行の場合、変動金利の一番金利が安いパターンで1.378%です。これを35年で返済すると、月々の支払いが6万49円になります。一方、リバースモーゲージは、楽天銀行の金利で変動金利3.6%スタートです。毎月負担する利息は、残っているローン残高2,000万円×金利3.6%÷12ヵ月で、6万円です。

 

購入時点から60年間生きた場合、住宅ローンの返済総額とこのリバースモーゲージの利息の支払いを全部合計すると、6,842万円“から”となります。

 

“から”としているのは、どちらも「変動金利」であり、ここから金利上昇によってさらに上がっていく可能性があるためです。もっと長生きする場合には、もっと支払いが増える可能性もあります。最低でもこのくらいの支払いが発生するという最低ラインの試算だと考えてください。

 

これに対して、4,000万円の物件を最初から全額住宅ローンを組んだ場合、総支払額は2026年4月のフラット35の金利で計算してみると、5,897万円で済みます。

銀行だけが儲かる?…貸す側の「本当の狙い」

もし銀行の立場だったら、どちらを利用してもらいたいかは明白です。

 

しかも、残価設定型の場合には最終的に土地建物を売却して清算するケースがほとんどです。建物は60年後にはほとんど価値がありませんが、土地には価値があるため、その土地を売却して銀行の収益に充てることが可能です。

 

長生きすればするほど元金の減らないこのリバースモーゲージ部分の負担が大きくなってくるため、どう考えても購入する側にとってはデメリットでしかありません。

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