「十分な貯金があるから、老後は一人でも大丈夫」と思っていても、おひとりさまが高齢になると、お金だけでは解決できない思わぬ壁にぶつかります。本記事では、40年連れ添ったパートナーと死別し、貯金2,500万円があるにもかかわらず、持病の入院手続きで「ある問題」に直面し途方に暮れたミユキさん(仮名・67歳)の事例をもとに、急増する「身元保証サービス」の実態とおひとりさまの入院・施設入所問題について、弁護士の清水勇希氏が解説します。

“保証人がいない”という悩みを解決する民間の「身元保証サービス」とは

このような悩みやリスクを解消するために、最近は多くのおひとりさま・おふたりさま高齢者が民間の「身元保証サービス」を利用しています。

 

「高齢者等終身サポート事業」とも呼ばれ、高齢者に対して身元保証や死後事務などのサービスを行う事業で、簡単にいうと「家族がいない、もしくは家族はいるけれど頼れる家族がいない方のために、家族の代わりに生活を支えるサービス」です。

 

高齢者等終身サポート事業が提供しているサービス内容は多岐にわたりますが、主に「身元保証等サービス」「死後事務サービス」「日常生活支援サービス」の3種類に分類されます。

 

総務省「身元保証等高齢者サポート事業における消費者保護の推進に関する調査 <結果に基づく通知>」より
総務省「身元保証等高齢者サポート事業における消費者保護の推進に関する調査 <結果に基づく通知>」より

「おひとりさま」を狙う高額請求も…身元保証サービスのトラブル

身元保証サービスの利用者が急増している一方、トラブルも増加しています。特にこれらの事業をめぐり、全国の消費生活センターなどに寄せられる相談件数は年々増加している状況にあります。主な相談内容は、下記の2つに大別されます。

 

1. 高額な契約を結ばされてしまった、返金が受けられないなどの「金銭トラブル」

2. 契約に含まれているはずのサービスの提供がなかったなどの「サービス利用時のトラブル」

 

こうした状況を踏まえ、2024年6月、内閣府等は「高齢者等終身サポート事業ガイドライン」を策定し、そのなかで事業者が遵守すべきチェックリストを示しました。

 

・提供されるサービス内容と費用の取扱いが明らかになっていること

・利用者の判断能力低下時の取扱いを定めている

・契約時に死因贈与や寄附(贈与)を条件等とした契約を締結していない

・預託金は分別管理し、破綻時の返還を担保する仕組みを設けること

・利用者からの相談窓口が設置されており、連絡先がわかること

 

しかし、ガイドラインはあくまで努力義務であり、それに反したとしてもペナルティはなく、すべての事業者が遵守しているわけではありません。広告で「安心・安全」とうたっていても、実際にはガイドラインの存在すら知らない事業者もあるのが現状です。

 

そこで、身元保証業界初の全国規模の業界団体「一般社団法人全国高齢者等終身サポート事業者協会」(全終協)が、業界の健全化のために、厚生労働省等の関係各省庁とも連携し、2025年8月から稼働しています。

 

同業界団体では、2026年9月以降、ガイドラインよりも厳しい基準をクリアした業者のなかから、外部審査も経て適正な事業者の認定などをして、安心して利用してもらえるよう業界の「見える化」を推し進め、健全化を図っています。

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