68歳妻が見つけた“見慣れない引き落とし”
恵子さん(仮名・68歳)は、ある日、夫婦共有の通帳を見て顔色を変えました。
「なにこれ…」
見慣れない会社名から、毎月十数万円の引き落としが続いていたのです。
夫の和夫さん(仮名・71歳)は数年前に定年退職。夫婦の年金収入は合わせて月18万円ほどでした。退職金や貯蓄を含め、金融資産は約3,000万円。住宅ローンも完済済みで、恵子さんは「贅沢をしなければ十分暮らしていける」と考えていました。
夫婦は特別裕福ではないものの、穏やかな老後を送っていました。
和夫さんは退職後、家庭菜園や散歩を楽しみ、時々近所の喫茶店へ行く程度。大きなお金を使うタイプではありません。
そのため、恵子さんは通帳の引き落としを見たとき、「何かの間違いでは」と思ったといいます。帰宅した夫に問いかけると、和夫さんは気まずそうに目をそらしました。
「ちょっと、投資みたいなものだよ」
詳しく聞くと、数ヵ月前、和夫さんのもとへ一本の電話がかかってきていたことが分かりました。
「今なら、シニア向けの資産運用で安定収益が期待できます」
そんな営業でした。
最初は断るつもりだったといいます。しかし、担当者は親しげに話し続け、「年金だけでは将来不安でしょう」「預金だけでは目減りする時代です」と不安をあおりました。
さらに、「元本保証に近い」「多くの高齢者が利用している」と繰り返されたことで、和夫さんは次第に信用してしまったといいます。
契約したのは、高額な投資用不動産関連のサブリース契約でした。頭金や諸費用として数百万円を支払い、さらにローン契約まで結んでいたのです。
「家族には、成功してから話そうと思ってた」
和夫さんは小さな声でそう言いました。恵子さんは、その場で言葉を失いました。
