(※写真はイメージです/PIXTA)

定年退職は、多くの人にとって人生の大きな節目です。長年働き続けた末に訪れる“自由な時間”。退職金が入り、住宅ローンも終わり、ようやく夫婦でゆっくり過ごせる――そんな未来を思い描く人も少なくありません。しかし、定年後の暮らしに対する期待は、夫婦で同じとは限りません。

「俺は夫婦で仲良く過ごしたいだけ」→妻が抱えていた本音

「俺は、夫婦で仲良く過ごしたいと思ってただけなんだ」

 

浩二さんがそう言うと、由紀子さんは静かに答えました。

 

「私は、“仲良く”と“ずっと一緒”は違うと思ってる」

 

高齢期は、家庭以外の居場所や人間関係が生活の支えになることもあります。総務省『社会生活基本調査』でも、高齢者が趣味や地域活動、友人との交流に時間を使っている実態が示されています。

 

現在、夫婦は「常に一緒」をやめました。由紀子さんはこれまで通り外出し、浩二さんも料理教室や地域活動へ参加するようになりました。

 

「定年後って、“夫婦で向き合う時間”が増えると思っていました。でも実際は、“お互いを一人の人間として見直す時間”だったのかもしれません」

 

浩二さんはそう話します。

 

退職金2,300万円。数字だけ見れば、夫婦の老後は安泰に見えるかもしれません。しかし、老後に必要なのは、お金だけではありません。

 

距離感、役割、自由、孤独――夫婦それぞれが“どう生きたいか”を改めて考えることもまた、定年後には避けて通れない現実なのです。

 

温泉旅行の夜、由紀子さんが見せた表情は、30年間押し込めてきた“自分自身の人生を取り戻したい”という本音だったのかもしれません。

 

 

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