1LDKで始めた老後の再設計
住み替えを決めるまでには、迷いもありました。
子どもたちは最初、「実家がなくなるのは寂しい」と言いました。律子さんも、押し入れから子どものアルバムや古いランドセルを出すたびに、胸が詰まったといいます。
「思い出を手放すような気持ちでした」
それでも、夫婦は話し合いを重ねました。
この先、車の運転が難しくなったらどうするのか。病院やスーパーまで歩いて行けるのか。庭や階段を管理し続けられるのか。考えるほど、「今のうちに動いたほうがいい」という結論に近づいていきました。
国土交通省『住宅市場動向調査』でも、住み替え時には住宅価格や広さだけでなく、交通の利便性や周辺環境を重視する人がいることが示されています。老後の住まいは、住居費だけでなく、日々の暮らしやすさを含めて考える必要があります。
夫婦が選んだのは、駅から徒歩圏内の1LDKマンションでした。
スーパー、病院、郵便局が近くにあり、車がなくても生活できます。エレベーターがあり、室内も段差が少ないため、将来足腰が弱っても暮らしやすいと感じました。
「最初は、1LDKは狭以下もと思いました。でも、実際に暮らしてみると、掃除も移動も楽なんです」
家具や荷物は大幅に減らしました。大きな食器棚、来客用の布団、使っていなかった座卓。処分には時間がかかりましたが、生活は少しずつ軽くなっていきました。
住み替え後、夫婦の生活は大きく変わりました。
朝は近くの公園を散歩し、買い物は徒歩で済ませます。以前のように、庭の雑草や雨漏りの心配をすることもなくなりました。
もちろん、庭付き一戸建てへの未練が完全に消えたわけではありません。
それでも誠さんは、こう話します。
「手放すなら、体力も判断力もあるうちがよかったんだと思います」
子育て期に最適だった家が、老後にも最適とは限りません。夫婦の住み替えは、家を諦める選択ではなく、これからの生活を守るための前向きな整理だったのです。
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