「一生暮らすつもりが」…庭付き一戸建てが負担に変わるまで
誠さん(仮名・68歳)と妻の律子さん(仮名・66歳)は、昨年、30年以上暮らした庭付き一戸建てを売却し、駅近くの1LDKマンションへ住み替えました。
夫婦の年金収入は月25万円ほど。住宅ローンはすでに完済しており、すぐに生活に困る状況ではありませんでした。
「昔は、この家で一生暮らすものだと思っていました」
家を建てたのは、誠さんが30代後半のころ。子ども2人を育てるために、郊外の分譲地に一戸建てを購入しました。庭には梅の木を植え、子どもたちが小さいころは夏にビニールプールを出したこともあります。
しかし、子どもたちはすでに独立し、実家に泊まりに来るのは年に数回。4LDKの家は、夫婦二人には広すぎるようになっていました。
最初に負担を感じたのは、庭の手入れでした。
春から夏にかけて雑草が伸び、秋には落ち葉がたまります。以前は楽しみだった庭仕事も、今では腰や膝にこたえる作業になっていました。
「ちょっと草を取るだけで、翌日まで体が痛むんです」
さらに、築年数の経過による修繕も避けられませんでした。外壁、屋根、給湯器、水回り。業者からは、今後数年でまとまった費用がかかる可能性を指摘されていました。
総務省『家計調査(2025年)』によると、65歳以上の夫婦のみ無職世帯の可処分所得は月約22.2万円、消費支出は月約26.4万円で、平均では毎月赤字となっています。夫婦の年金収入はこの水準をやや上回りますが、住宅修繕費や医療費が重なれば、貯蓄の取り崩しは避けられません。
「ローンがないから安心、と思っていたんです。でも、家を維持するお金はずっとかかるんですよね」
決定的だったのは、律子さんが階段で足を滑らせたことでした。大きなけがには至りませんでしたが、それ以降、2階の寝室へ上がるのが怖くなったといいます。
「この家は、今の私たちには大きすぎるのかもしれない」
夫婦は初めて、住み替えを現実的に考えるようになりました。
