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トランプ劇場と超富裕層課税 増税か、減税か――税制が映し出すアメリカの真実
奥村眞吾(著)+ゴールドオンライン(編集)
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繰り返される「税源偏在是正」の要請
2026年4月13日、埼玉県、千葉県、神奈川県の3県知事は、財務省と総務省を訪れ、東京都と周辺自治体との間で行政サービスに格差が広がっているとして、税源の偏在是正を求める文書を提出しました。
この動きは今回が初めてではありません。2025年8月にも、同じ3県の知事が財務省・総務省に対し同様の申し入れを行っています。大企業が東京都に本店や事業所を集中させていることにより、東京都への税収の偏在が進んでいるとして、地方一般財源の総額確保・充実を求めてきました。
利子割見直しと「清算制度」構想
こうした要請を受け、総務省は「地方税制のあり方に関する検討会」を設置し、2025年7月に中間報告書を公表しました。
そのなかでは、利子割の納税について、金融機関の所在地ではなく、利子と相関性の高い所得データに基づいて都道府県間で税収を調整する「清算制度」の導入案が示されています。
なお、利子所得は原則として、15.315%(これに加えて地方税5%)の税率による源泉分離課税であり、源泉徴収によって納税が完結する仕組みとなっています。
税制改正の方向性と東京都の反発
令和8年度税制改正大綱では、利子割問題に加え、法人住民税・法人事業税といった法人2税、さらに固定資産税についても必要な措置を検討すると明記されました。
法人2税は2027年度に、固定資産税は2027年度以降に結論を得るとされていますが、東京都の小池百合子知事は「また東京を狙い撃ちするものだ」と強く反発しています。
抜本改革の難しさと現実的な着地点
今回の3県知事の陳情は、こうした改正内容では不十分であるという認識に基づくものです。
仮に抜本的な見直しとして、法人事業税を地方交付税の財源に組み込めば、地方間の税収格差は一定程度是正される可能性があります。しかし、その場合には税収が減少する都府県からの強い反対が予想されます。
このため、2027年度以降に予定される税源是正も、大幅な制度変更ではなく、部分的な見直しにとどまる可能性が高いと考えられます。
「多摩川格差」と住民の選択
3県にとって税収増は、公共施設の補修や福祉施策の充実に充てる重要な財源となります。
一方で、東京都と川崎市の間で指摘されるいわゆる「多摩川格差」に関する報道では、行政サービスが手厚い東京都は家賃などの生活コストが高く、川崎市は比較的住居費が抑えられるという声も見られます。
教育や職場の事情から転居が難しい場合もありますが、千葉県からは江戸川を越えて、埼玉県からは荒川を越えて、神奈川県からは多摩川を越えて東京都へ移住することで、一定の格差を解消できる側面もあります。
海外に見る「税と居住地」の関係
海外に目を向けると、税負担を考慮して居住地を選択する例も見られます。
たとえば米国では、ニューヨークのプロ野球チームに所属する選手が、州所得税のないフロリダ州に住所を置くケースがあります。また、実業家のイーロン・マスク氏は、税負担の高いカリフォルニア州から、税制面で有利なテキサス州へ移住しています。
もっとも、同じ米国でも、高所得者が必ずしも低税率の州へ移動するわけではなく、居住地の選択には多様な要因が影響しています。
「顧客満足度」から考える地方財政
日本では、山陰地方や四国、東北の一部地域において、自主財源に乏しく、国からの交付金や補助金への依存度が高い県が存在します。
それでも、高齢者を中心に、生まれ育った地域を離れずに生活を続けるケースは少なくありません。
マーケティングの分野では「顧客満足度(CS)」という概念がありますが、地域社会においても、住民が何を重視し、どのような生活を望んでいるのかという視点から、地方財政のあり方を再検討することが求められているのではないでしょうか。
矢内一好
国際課税研究所
首席研究員
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