「こんなに孤独だとは」…地方移住で崩れていった生活
話を聞くうちに、夫婦が移住後に抱えていた現実が見えてきました。まず大きかったのが、“地域との距離感”でした。
移住前、夫婦は「地方は人が温かい」というイメージを持っていました。しかし実際には、近所付き合いには独特の空気があり、外から来た人間として気を遣う場面も多かったといいます。
「悪い人じゃないんです。でも、“昔からここにいる人たち”の輪の中に入るのが難しくて」
加えて、車社会にも苦労しました。最寄りのスーパーまで車で20分。病院も遠く、明子さんは運転に不安を感じるようになります。
さらに修司さんは、移住後しばらくして強い無気力感に襲われました。
会社員時代の肩書も人間関係もなくなり、地域での役割も見つからない。毎日が急に長く感じられるようになったのです。
内閣府『令和7年版高齢社会白書』でも、高齢期は社会とのつながりの低下や孤立が課題となることが示されています。特に住環境が大きく変わる場合、人間関係や生活習慣の変化が心理面に影響することもあります。
「“自然があれば幸せ”だと思っていました。でも、それだけじゃ生活は成り立たなかった」
生活面でも誤算は続きます。
古い家は修繕費が想定以上にかかり、冬場は寒さも厳しい。都市部より安いと思っていた生活費も、車の維持費や光熱費で思ったほど下がりませんでした。
一方、夫婦は周囲に弱音を吐けずにいました。
「自分たちで決めた移住だから、“失敗した”って認めたくなかったんです」
現在、夫婦は地方都市中心部への住み替えを検討しています。完全に東京へ戻るのではなく、病院やスーパーが近い環境へ移る方向で話を進めているといいます。
「移住そのものが悪かったとは思っていません。でも、“暮らす”ことを甘く考えていた部分はありました」
地方移住は、人生を豊かにする可能性を持つ選択です。しかし老後の住み替えでは、医療、交通、人間関係、孤独――日々の暮らしをどう支えるかまで含めて考える必要があります。
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