直近の値下がり幅の2倍の値幅で上がる「倍返し」
話を今の相場に戻すと、3年波動で1万2000円あまり値上がりした日経平均が、その後の調整で6000円弱値下がりして底をつけ、反発し始めたということは、半値押し目前で株価が反転したことになります。相場のセオリーからすれば、これは上昇サインです。
ここから楽観シナリオの目標株価を設定します。ここでも相場の経験則が大事になります。
このパターンで意識すべきは「倍返し」の法則です。2013年に大ヒットしたドラマ「半沢直樹」で有名になったセリフではありません。あちらは「倍にして仕返しする」ことですが、こちらは相場用語で、上昇トレンドにある相場は、直近の値下がり幅の2倍の値幅で値上がりすることを指した言葉です。ドラマの倍返しと違って、こちらは大歓迎の現象です。上昇トレンドが続いている相場ならば、上げ下げを繰り返しながら新高値を少しずつ切り上げていくことが多いので、大雑把に言うと、100円上げて50円下げ、また100円上げて50円下げる……というサイクルを一定の期間繰り返すという相場の習性を言い表した格言です。
ただし、倍返しはいつも起きるわけではなく、大事なのは日柄とチャートの形です。今回はどうかと言うと、きれいに半値押し直前で切り返していること、さらに前回の上げ相場が3年波動、今回も次の天井が2018年から2019年と予測されることから本書(『世界マナーが狙う「大化け日本株」』小学館)の第1章で解説しましたが、2011年もしくは2012年が7年波動の出発点と考えられるため)、2016年から3年という期間が意識されますので、ここから倍返しすれば、半値押しの調整を挟んで同じ3年間で同じ1万2000円の値幅を上げるという美しいチャートを描きます。
底値の約1万5000円から1万2000円分値上がりすると考えると、楽観シナリオの目標株価は2万7000円ということになります。
「量から質へ」の転換が期待されるアベノミクス
では、楽観シナリオを実現する政治経済の動向や政策上の条件は何でしょうか。すでにお話ししたように、波動を読むうえで大切なのは日柄、その日柄は経験則から決まっていますが、金融政策や国際情勢によって日柄がズレる現象も起きます。波動から天井の時期と高さを予測したら、それが実現する条件、実現しない条件を考えると、さらに予測の精度が上がります。
安倍政権が発足して以来、相場の大きなエンジンは、常に「アベノミクスが進展している」と市場が判断することでした。最初の3年波動のメイン・エンジンは、そのなかでも金融政策でした。異次元の金融緩和によって相場に勢いがつき、それを好感して個人消費が高まり、円安によって輸出基幹産業が潤って、国内には外国人観光客が押し寄せました。
しかし、日銀は2016年9月にその戦略を放棄し、「量から金利へ」と舵を切りました。これは大きな間違いでしたが、金融政策だけに頼る第1ステージに限界が見えていたことも事実です。第2ステージは、金利政策に走った日銀に期待するのではなく、「量から質へ」の転換がカギになります。つまり、アベノミクスがどっしりと腰を落ち着けた成長戦略を推進できるかどうかです。
なお、菅下氏の予測する「中立シナリオ」「悲観シナリオ」については本書『世界マネーが狙う「大化け日本株」』で紹介しています。