銀行が「債務超過に陥った融資先企業」にも伴走・サポートを続ける理由…元メガバンカーの経済評論家が教える「銀行の胸算用」

銀行が「債務超過に陥った融資先企業」にも伴走・サポートを続ける理由…元メガバンカーの経済評論家が教える「銀行の胸算用」
(※写真はイメージです/PIXTA)

どれほど経営努力を尽くしても、さまざまな要因で「債務超過」に陥ってしまうことがあります。しかし、場合によっては、借入先の銀行が寄り添い、サポートを続けてくれるケースもあります。本記事では、会社の会計の基本と、銀行のビジネス的な視点について、元メガバンカーの経済評論家の塚崎公義氏が解説します。

なぜ!? 債務超過でも倒産しないケース…ヒントは「減価償却」

企業の赤字が続き、「資産を全部売っても借金が返せない」という状況に陥ることを「債務超過」と呼びます。そうなると、銀行としては大変不安です。

 

そのため、「ほかの銀行が返済を要求すると、借り手は資産を売って返済するだろう。そうなると、わが行が返済を受ける資金が枯渇してしまうかもしれない。他行が返済を要求する前に急いで返済を要求しよう」と考えるはずです。

 

そうして銀行からの返済要請が殺到すると、企業の資金繰りが破綻して倒産するのが普通です。

 

しかし、取引銀行が一行だけであれば、別の考え方も可能です。また、銀行が複数あっても、返済を要求せずに待つという可能性も皆無ではありません。わかりやすいのは、「借り手には技術力があるので、今は不況で赤字だが、景気が回復すれば黒字になって返済可能になるだろう。それまで待ってやろう」と考える場合です。

 

もっとも、それだけではありません。「今、急いで回収しようとすると、借り手の持っている機械がスクラップ業者に二束三文で買い叩かれ、わが行の受け取れる返済額が非常に小さくなってしまうかもしれない。それなら、借り手を生かしておいて、少しずつでも回収しよう」と考える場合もあるからです。

 

銀行から100万円借りて機械を買った借り手から「毎年1万円の赤字が今後も続きます」という連絡を受けた銀行は「それなら〈減価償却分〉を使って返済させよう」と考える場合があるでしょう。

 

借り手が購入した機械を、毎年10万円「減価償却」しているとします。10万円で仕入れた材料を加工して19万円で売っていると、毎年1万円の赤字です。しかし、現金の出入りを考えると、売り上げが19万円で仕入れが10万円ですから、毎年9万円の流入超過になっています。その9万円を返済に充てさせればよいのです。10年で90万円回収したところで機械が壊れ、借り手が倒産することになるでしょうが、それまでは生かしておいた方が得なのです。

初心者向け解説:減価償却で利益とキャッシュフローが乖離する

企業が鉛筆を買った代金は、決算書では費用として扱われます。仮に決算期末の時点で鉛筆が半分残っていたとしたら、正しくは「費用は鉛筆代金の半分で、残り半分は企業の資産として計上する」とすべきなのですが、面倒なので全額を費用として扱うわけです。

 

しかし、大型機械はそういうわけに行きません。買った年に購入代金全額を費用として計上すると、その年の決算が大幅な赤字になりかねないからです。一方で、機械が壊れた年に機械購入代金だけ損をしたという計算をすると、今度は機械が壊れた年だけ大幅な赤字になってしまいます。それでは企業の状態を正しく反映した決算とはいえないでしょう。

 

そこで企業は、減価償却という手法を用いて決算を実態に合わせています。たとえば100万円の機械が100万個の製品を作った時に壊れるとすると、製品1個作る為に機械が1円分すり減るので、1円だけ減価償却という費用を計上するのです。

 

製品を作るために機械がすり減るとすると、その分は売値に上乗せする必要があります。1円で材料を仕入れて2円で売って、差額の1円を機械がすり減った分として確保するのです。

 

そうなると、決算の数字と現金の増減にズレが生じます。機械を仕入れた瞬間は、現金が100万円減りますが、決算はゼロです。その後も決算はゼロのままですが、製品を1個売るごとに手元の現金は1円ずつ増えていくのです。

 

上記の例では、毎年10万個の製品を作っていることになり、売上が19万円ですから製品が1個あたり1.9円でしか売れずに企業は赤字だったということになります。しかし、収入が1.9円あるのに材料費は1個あたり1円ですから、企業の現金は0.9円ずつ増えていくのです。その分を使って銀行借り入れの返済ができる、というわけです。

 

 

今回は、以上です。なお、本稿はわかりやすさを重視しているため、細部が厳密ではない場合があります。ご了承いただければ幸いです。

 

 

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塚崎 公義

経済評論家

 

 

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